リサイクル業

近年、リサイクル事業(廃棄物処理事業)は社会には必要不可欠なものとなっています。電気、ガス、水道事業と同様に、リサイクル事業は社会インフラとして人々の生活を豊かにしているものです。以前は、廃棄物処理業界には許可を持たずに利益追求のみに重点を置くような違法業者が蔓延していました。

しかし、環境問題に対しての意識が向上している現在では、そのような違法業者の撲滅が進み、クリーンな業界として人々の生活を支える業界に変化しています。

INDEX
  1. リサイクル事業の難しさは環境改善と利益追求の両方を意識する点
  2. 「環境にやさしい」ではもう勝てないリサイクル業界
    1. 廃油を石鹸に変えた「ねば塾」の成功事例
    2. 「ねば塾」と「エコトピア飯田株式会社」が成功した共通点はインターネット
  3. 新聞古紙を住宅用断熱材「エコファイバー」に変えて成功した例
  4. リサイクル事業で重要なことは信頼性を高めること
  5. リサイクル業で生まれた新しい概念「アップサイクル」
  6. 「リサイクル業界はクリーンな業界」へ

リサイクル事業の難しさは環境改善と利益追求の両方を意識する点

リサイクル事業の難しいところは、環境問題と利益追求の両方を意識して、事業として継続していかなければいけない点です。不用品を買い取り、修理・清掃を行い再び市場に流すリユースビジネスに比べて、事業を行うための必要資金が大きくかかります。廃棄物を保管するための施設や運搬車両の調達など、まとまった資本金を準備する必要があるのです。

「環境にやさしい」ではもう勝てないリサイクル業界

廃棄物などを回収し、新たな価値としてリサイクルされた商品は「環境にやさしい」というイメージが付きます。しかし、リサイクルされた製品が珍しくなくなった現在、環境にやさしいだけでは企業は生き残っていけません。市場にある既存の製品と同じマーケットで勝負する必要があります。製造にコストを掛けてしまうと製品の価格も上げなければいけません。

しかし今の時代、商品を売るには他企業との価格競争になります。環境にやさしいだけではもう勝てないのです。
このように厳しいリサイクル業界ですが、廃棄物のリサイクルで30年以上にわたって売り上げをあげている「ねば塾」という企業があります。

廃油を石鹸に変えた「ねば塾」の成功事例

産業廃棄物のひとつに廃油があります。

その廃油を使い、価値ある製品に変えて成功を納めた企業のひとつに「有限会社ねば塾」が挙げられます。ねば塾は、長野県佐久市にある化粧品石鹸の製造販売を中心とした事業を行う会社です。

ねば塾が生まれたのは1978年。当時、知的障害者総合福祉施設で働いていた笠原社長が、入所者の「社会に出て働きたい」という希望を実現させるために塾を開設したことがきっかけです。
塾の開設後まもなく、笠原社長は2人の塾生とともに建設会社へ就職。そして、当初2人だった塾生が4年後には6人になります。

今後もねば塾に入塾を希望する者が増えていくと予想し、「廃油リサイクルを使った石鹸の製造」を始めます。石鹸を作るためには工場が必要でしたが、笠原社長は初期投資をなるべく減らすためにいろいろな工夫を行ないました。

工場建設には比較的安価で手に入る中古資材を使い、製造設備は廃業した石鹸製造業者から調達するなど、様々な工夫によって初期投資額を減らすことに成功しました。

当時、廃油リサイクルを製造する企業は他にもありましたが、問題になるのが廃油特有の臭いでした。製造に行き詰まっていた笠原社長は、以前に石鹸製造業を営んでいた方と出会い、見事売れる石鹸を作ることに成功したのです。

「ねば塾」と「エコトピア飯田株式会社」が成功した共通点はインターネット

ねば塾画像引用元:ねば塾

ねば塾はインターネットがまだ身近な存在ではなかった1999年からネット上での販売を開始しています。楽天市場に「木のクラフト屋」というインターネットショップをオープンしました。インターネット販売が功を奏し、「ねば塾」というブランドが世に広まるきっかけになったのです。

残念ながら、笠原社長は2016年にお亡くなりになられましたが、ねば塾はこれからも人々に愛され続けるブランドだということは間違いないでしょう。

また、エコトピア飯田株式会社もねば塾と同様に早い段階でインターネットを活用し始めた企業です。インターネットを使い始めてすぐ、エコトピア飯田株式会社は地球環境の問題に挑む企業としてテレビで全国放送されました。それを契機に、Yahoo!の検索でも上位になり全国にエコファイバーの存在を認知してもらえるようになったのです。

新聞古紙を住宅用断熱材「エコファイバー」に変えて成功した例

エコファイバー画像引用元:エコトピア飯田株式会社

廃棄物を価値あるものにリサイクルして成功した事例として、もうひとつ挙げられる企業が「エコトピア飯田株式会社」です。エコトピア飯田株式会社は長野県飯田市にある建築用断熱材の製造・販売・施工を行う会社です。

エコトピア飯田株式会社の櫻井社長はリサイクル文化が進んでいるフィンランドで、新聞古紙を原料としたセルロースファイバーに出会います。日本に帰国後、リサイクル事業を行う上でJISやエコマークのような商品評価を得る必要があると考えました。そして、厳しい過程を経てエコマーク認定を取得したのです。

高い吸放湿性が売りのエコファイバーは、結露やカビなどの住宅の問題を減らすことから非常に価値あるリサイクル製品。エコトピア飯田株式会社では、他にも新聞古紙100%の油吸着剤「エコガード」汚泥脱水ろ過助剤「エコファン」を製造販売しています。

リサイクル事業で重要なことは信頼性を高めること

リサイクル事業で他企業との競争に勝つためにもっとも大切なことは「信頼性」です。リサイクル業界には、市町村などに許可申請を行わずに廃棄物の収集や運搬を行う違法業者が存在します。

そのため、業界としてのイメージはクリーンになりつつあるものの、未だに悪質で違法な印象が残っており、廃棄物の処理を委託する排出者も業者選びにはセンシティブになっています。

排出者にとって、低価格で廃棄物の処理が行えるのは確かに魅力的ですが、信頼性が低いと思われる処理業者に委託することはないでしょう。もし、廃棄物処理の委託契約を結んだ業者が契約通りに処理を行わなかった場合、またその影響で社会的損害を生じるようなことになれば、排出者も社会的信用を一瞬で失うことにつながります。

そのため、産業廃棄処理業者にとって「信頼性」は、他社と差別化を図れるストロングポイントになるのです。信頼性の高い業者は必然的に廃棄物の集荷力も高くなります。

リサイクル業で生まれた新しい概念「アップサイクル」

freitag画像引用元:FREITAG

近年、リサイクルやリユース以外に「アップサイクル」と呼ばれる、廃棄物に付加価値を高めて商品として販売する方法が外国から日本に入ってきました。
アップサイクルがリサイクルやリユースと異なる点は「廃棄物を他の製品に変え価値を高めること」です。

例えば、廃棄された長靴は植物や花を植えるための鉢としても使うことができます。たとえ廃棄されたものでも、アイデア次第で違う用途に使用できる。これがアップサイクルです。アップサイクルは環境に優しいだけではなく、個性的でデザイン性も豊かなところがポイントです。リサイクル業界には新しい波がどんどん入ってきそうですね。

「リサイクル業界はクリーンな業界」へ

リサイクル業界は着実に変化を遂げてきました。廃棄物をリサイクルした商品も多く販売され、人々も少しでも地球環境に良いものを消費するようになってきています。

リサイクル業界が、今後さらにクリーンな業界として人々に認知されるためには、製品の品質向上以外にも運搬車での安全運転や地域住民への心遣いなど、細かいことを意識していくべきではないでしょうか。