上司と部下たち

人材が定着すれば、技術や経験、接客などの面で生産性が高まり、より多くの依頼を引き受けられるようになっていきます。しかし不用品回収業に関しては、なかなか定着しないケースが多く、人によっては勤め始めたその日に辞めてしまったり、連絡がつかなくなるということもしばしばあります。

もちろん本人にも問題がありますが、雇う側にできることも少なくありません。ここでは人材が定着しない理由を指摘するとともに、そのための解決策について解説します。

INDEX
  1. 人材が定着しない2つの理由
    1. 採用の段階で定着しにくい人材を選んでいる
    2. 採用後に計画的な育成を行なっていない
  2. 採用基準を見直す
    1. 「素直に聞く」ができているか?
    2. 社会人の常識をわきまえているか?
  3. 育成計画で努力の方向性を「見える化」
    1. なぜ育成計画が必要なのか?
    2. 育成計画を立てるための3ステップ
    3. 問いかけ型の育成スタイルをとる
  4. まとめ

人材が定着しない2つの理由

不用品回収業に人材が定着しない理由には様々な理由がありますが、ここでは採用基準人材教育の視点から以下の2つを指摘しておきましょう。

採用の段階で定着しにくい人材を選んでいる

不用品回収業の採用活動は、主に既存の従業員や知人などの紹介に頼りがちです。このような場合、客観的に採用することができず、結果として定着しにくい人材を採用してしまう可能性も高くなります。またそういった採用ルートでなくとも、明確な採用基準を設けずに採用してしまうと、いざ働き始めてから以下のような問題が発覚するとも限りません。

・次の仕事までの繋ぎだと考えている。
・平気で嘘をつく。
・上司の指示に従わなかったり、反論したりする。
・時間を守らない。
・挨拶などの基本的なマナーを知らない。 など

こうした人材は組織として管理しづらく、また本人としても居心地の悪さを感じてしてしまう傾向にあります。

採用後に計画的な育成を行なっていない

笑顔の男性

またせっかく良い人材を採用できたとしても、採用後に適切な育成をしなければ本人が仕事にやりがいや面白さを見つけられません。この状態を放置してしまうと、結局採用した人材が流出してしまいます。

特に1980年代後半から2000年代初期に生まれ、働き始める前にリーマン・ショックが起きた若年層(ゆとり世代、さとり世代、ミレニアル世代)を育成する場合は、彼らの以下のような特徴に配慮する必要があります。

・期待される成果や納期を上司などに確認しないまま、自分基準で進める
・意味や価値が感じられないことには興味を持たず、進んでやりたがらない
・失敗や間違いを恐れて、行動につながらない
・うまくいかないと自信を失い、学習や改善を行おうとしない など

世代によっては「根性が足りん!」「だから若い世代はダメなんだ!」と言いたくなるかもしれません。しかしそれを言っていても人材は定着せず、組織の生産性も上がりません。人材を定着させるためには、雇う側がやり方を変えなければならないのです。

採用基準を見直す

まずは採用の段階で定着率を高めるために、採用基準を見直しましょう。大前提として「この仕事をどれくらい続ける気なのか?」と聞いておく必要がありますが、それ以外にもチェックしておくべき基準はあります。

そこで以下では採用時に最低限設けるべきハードルを2点紹介しています。これらができていない人材の場合、定着させるにしても育成するにしても、相当の時間と労力をかけなければなりません。採用する際はそのための覚悟が必要でしょう。

「素直に聞く」ができているか?

職歴に不用品回収業があったり、引越し業があったとしても、それが必ずしもプラスに働くとは限りません。なぜなら前職の経験があるからといって、これから働く職場でも前の職場の理屈や価値観を持ち込む人も多いからです。そのような人の場合、こちらの話を素直に聞けなくなり、組織の考え方やサービスを理解しようとしない可能性が高くなります。

するといつまで経っても組織の中で評価されるような人材にはなれません。本人も評価されなければ面白くなくなるため、退職するという選択をしてしまいます。

そのため採用時には、例えば仕事をする上でのこだわりポイントを聞いてみて、こだわりが必要以上に強くないかを確かめるなどして、相手に仕事をする上での柔軟性があるかを事前にチェックしておく必要があります。

社会人の常識をわきまえているか?

不用品回収業は、れっきとしたサービス業です。不用品を運搬するだけというケースは滅多になく、必ずと言っていいほど依頼者に対する接客が必要になります。このような場合に「時間を守る」「気持ちの良い挨拶できる」「敬語が使える」といった社会人の常識をわきまえていないと、依頼者からの感謝の言葉をもらえなかったり、最悪の場合はクレームにつながったりする可能性が高くなります。

もちろん上司や先輩の指示やアドバイスを素直に聞く素地があれば、社会人としての常識を教えることもできます。しかしその時間と労力を節約したければ、採用段階で常識があるかを確かめておきましょう。

・面接の連絡時の電話の受け答えに問題はなかったか?
・面接の時間をきっちり守ったか?
・面接時の挨拶や言葉遣いに問題はなかったか? など

こうした初歩の段階で問題があったり、嫌な予感がしたりするようであれば、採用を諦める方が無難です。その問題は採用後にも必ず問題になりますし、嫌な予感もかなりの高い確率で的中するからです。

育成計画で努力の方向性を「見える化」

比較的定着してくれそうな人材が採用できたら、その確率をより高めるために育成計画を立て、何をどう頑張ればできる仕事が増えたり、もらえる給料が増えるのかを見える化していきましょう。

なぜ育成計画が必要なのか?

ガントチャート

・期待される成果や納期を上司などに確認しないまま、自分基準で進める
・意味や価値が感じられないことには興味を持たず、進んでやりたがらない
・失敗や間違いを恐れて、行動につながらない
・うまくいかないと自信を失い、学習や改善を行おうとしない など

こうした特徴を持つミレニアル世代は、何をどう頑張れば何につながるかを見える化されれば、高いモチベーションで仕事に臨む傾向があるとされています。だからこそ育成計画によって努力の方向性を見える化しておく必要があるのです。

育成計画を立てるための3ステップ

ステップ1:ゴールを決める

育成計画を立てる際の最初のステップは、その人材にどうなってほしいかです。一人で回収に行けるまでがゴールなのか、対応が難しい案件にも柔軟に対応できるようになるまでがゴールなのかは組織によって様々ですが、ともかくも最終的にどうなって欲しいのかを具体的に決定しましょう。

ステップ2:ゴールまでの道のりを分割する

次に行うのは、ゴールまでにステップを設けることです。例えば「対応が難しい案件にも柔軟に対応できるようになる」を最終的なゴールに設定した場合、次のようなステップが考えられます。

ゴール 対応が難しい案件にも柔軟に対応できるようになる
ステップ3 一人で回収に行くことができる
ステップ2 先輩社員のサポートとして戦力になる
ステップ1 先輩社員の指示通りに動ける

ステップ3:各ステップごとに基準を決める

最後に行うのが、各ステップに到達したことを上司や先輩が判断するための基準を決めることです。例えば「先輩社員の指示通りに動ける」と一口に言っても、以下のような基準をクリアしていなければ、指示通りに動けるとは言えません。

・重い荷物を2人以上で持つ際に、どこにどう力を入れれば良いかを理解していて、実践できる。
・トラックの荷台に荷物を積み込む際に、どのように積むべきかを理解しており、実践できる。
・依頼者からの電話に出た際に、どのような情報を聞くべきかを理解しており、実践できる。 など

こうした基準を作るには、育成計画を作る側が普段の仕事を振り返り、自分たちが当たり前にやっている仕事ができるようになるには何が必要かを、洗い出す作業が必須です。

育成計画を運用する

前進していく人を描いたイラスト

育成計画を運用するためには、上司や先輩がその必要性を理解し、日常会話レベルで育成計画の話題を出すくらいまで、育成する側と育成される側に浸透させなければなりません

また育成する人材に対して「ステップを上がっていけばこんなメリットがある」ということを言葉で伝えていくことも重要です。それが給料というわかりやすい形でもかまいませんが、相手が給料を上げることに興味がない場合は「ステップ○に到達すれば、こんな面白さがある。こんな楽しさがある」といった具合に、相手の興味に合わせたアプローチをする必要もあります。

問いかけ型の育成スタイルをとる

「自分で考えろ」「背中を見て盗め」といった従来型の育成スタイルは、ミレニアル世代のような若年層には適していません。そのためこれからの人材教育には、問いかけ型の育成スタイルが求められます。

例えば本人が何か失敗した際に、すぐに上司や先輩が「これが原因だ」「こうすればいいんだ」と答えを与えるのではなく、「どうして失敗したと思う?」「どうすればうまくできると思う?」と問いかけるのです。これによって自分の考え方や行動が結果にどう影響したのかを、本人に気付かせることができます。自分で気づくことで学びが定着し、その学びが身についていくというわけです。

ただし問いかけた後、そのまま放置していれば従来型の教育スタイルと同じです。放置するのではなく、ちゃんと自分でどんな答えを出したのかを聞いてやり、修正が必要なら修正を促し、ヒントが必要ならヒントを出すといった具合にフィードバックを与えることも非常に重要です。

まとめ

育成されることによって自分の成長を実感し、それによって仕事の面白さややりがいに気づけるようになれば、その人材は「この会社でもっと頑張ろう」と考えるようになります。

確かにこれは一朝一夕に実現できるような状態ではありません。しかし実現できれば人材の定着率は上がり、組織の生産性向上にもつながるでしょう。人材の定着率に悩んでいるようであれば、まずは一度採用基準を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。