高齢者の集まり

現在日本は少子高齢化が年々進み、このままでは2053年には1億人を割って9,924万人になると予想されています。また2065年には65歳以上の人口が38.4%となり、約2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になると言われています。

こうして高齢者人口が増えていくと様々な問題が生じる一方で、中小リサイクル業者にとっては一つのチャンスと言うことができます。なぜなら高齢者の増加が、中小リサイクル業者のニーズの拡大につながる可能性があるからです。

ここでは高齢化に伴って期待できるニーズの拡大と、そのなかで消費者から支持される中小リサイクル業者になるためのヒントを紹介します。

INDEX
  1. 拡大する高齢者のニーズ
    1. 高齢者の「中古品への抵抗感」は減少傾向へ向かう
    2. 高齢者には「頼みたいこと」がたくさんある
  2. 目指すべきは「まちの電器屋さん」ポジション
    1. 「まちの電器屋さん」が生き残れる理由
    2. 中小リサイクル業者は「まちの電器屋さん」に学ぼう
  3. まとめ

拡大する高齢者のニーズ

家電と家具

高齢者の「中古品への抵抗感」は減少傾向へ向かう

高度経済成長を経験している高齢者層のなかには、「中古品なんて使いたくない」と考える人も少なくありません。そのため高齢者になるほど、中古品の購入をはじめ、そのほかのリサイクル業者のサービスを利用しようと思う人も減っていく傾向にあります。

実際、消費者庁が行なった「平成29年度消費者意識基本調査」によれば、「リユース品(中古品)を使用したい」と回答した人の割合を年齢別にみると、高齢者になるほどリユース品を使ってもいいと考える人の割合が減っており、60代で70%弱、70代で60%、80代で50%弱となっています。

しかし一方で、30代では80%以上、40代でも80%弱がリユース品を使ってもいいと考えていることがわかっています。

これはつまり、今後30代や40代の世代が高齢者になっていくにつれて、「高齢者がリユース品に抵抗がある」という現在の傾向は減少していく可能性が高いということです。そうなれば、高齢者の間でのリサイクル業のニーズは今よりもっと拡大していくことが期待できます。

高齢者には「頼みたいこと」がたくさんある

困っている高齢者女性

また、子供と離れて暮らす高齢者や、生涯独身の単身高齢者が増えてくると、日常生活のなかで高齢者の「頼みたいこと」も増えていきます。

内閣府が実施した「平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」によれば、「病気や一人でできない仕事の手伝い等に頼れる人」が「いない」と答えた人が全体の3.1%となっています。

数字を見るとごく一部に思えますが、65歳以上の人口は平成29年9月15日現在の推計で3514万人ですから、この3.1%は108万人にもなります。今後高齢者全体だけでなく、単身高齢者も増えていくことを考えれば、この数字はもっと増えていくはずです。

ではこうした「頼みたいこと」のある高齢者は、具体的にどのようなことで困っているのでしょうか。同調査では以下のようなものが上位に入っています。

・住まいが古くなりいたんでいる
・住宅の構造(段差や階段など)や造りが高齢者には使いにくい
・住宅が広すぎて管理がたいへん
・日常の買い物に不便
・医院や病院への通院に不便
・交通機関が高齢者には使いにくい、または整備されていない など

一見するとリサイクル業者が対応できるものはないように思えるかもしれません。しかし頭を柔らかくして考えれば、自分たちができることが見えてくるはず。以下ではそのヒントとして「まちの電器屋さん」に目を向けてみましょう。

目指すべきは「まちの電器屋さん」ポジション

まちの電器屋さん

「まちの電器屋さん」が生き残れる理由

近年、家電といえば大手量販店での購入やインターネットでの通信販売を利用するのが主流です。仕入れ値の都合上、大幅な値引きは難しいまちの電器屋さんで、わざわざ家電を購入する人は減ってきているはずです。

しかし、厳しい状況にも関わらず、10年20年と変わらず営業を続けるまちの電器屋さんもあります。なぜ生き残っていられるのかというと、それは「仕事の幅を限定していないから」です。

大手量販店の仕事は電化製品の販売・配送がメインですが、まちの電器屋さんの仕事はそれだけでは終わりません。切れた電球を替える。家電の操作方法を丁寧に教える。新しいパソコンのセットアップをする。場合によっては掃除を手伝ったり、買い物を手伝ったりすることもあります。

顧客が若者ばかりでは、こうしたサービスは不要でしょう。しかしまちの電器屋さんの顧客の多くは高齢者です。だから家電にまつわることから、日々の生活の雑事まで、何かと「頼みたいこと」があるのです。

高齢者の細かなニーズに応えていくと、おのずと「ちょっと高いけど、いつも世話になってるし、通販ではなくて○○電器のお兄ちゃんのところで買おう」という考えになります。

この「いつもお世話になってるし」こそが、まちの電器屋さんが営業を続けられる秘訣と言えるでしょう。

中小リサイクル業者は「まちの電器屋さん」に学ぼう

考える中年男性

高齢者の顧客が増えていくなか、「まちの電器屋さん」モデルは中小リサイクル業者にも応用が効きます。

たとえば冷蔵庫の回収を依頼されたときに、部屋が汚れているのに気づいたら「腰とか弱ってると掃除も大変ですよね。もしよかったらお手伝いしましょうか」と言ってみる。

中古洗濯機の配送に行ったときに電球が切れているのに気づいたら、「ついでにこれ替えておきましょうか?」と言ってみる。

そうした声かけの積み重ねが信頼になり、その信頼がリピート利用につながるのです。

通販業者や提携業者に商品の配達を任せてしまう大手量販店に比べ、中小リサイクル業者はお客様の生活スペースに立ち入ることができます。それはすなわち、ニーズを拾うチャンスが多いということです。

あまりジロジロと部屋の中を見るのは失礼ですが、そうならない程度に高齢者の「頼みたいこと」にアンテナを張ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

高齢者のニーズは多岐に渡ります。これに答えるためには、リサイクル業者はサービスの幅を臨機応変に広げていく必要があります。

なぜなら「不用品の回収しかしない」「中古品の販売・配送をしたら終わり」というやり方を続けていれば、今後拡大していく高齢者のニーズには答えられないからです。

ブックオフコーポレーションやヤフオク!、メルカリなどのサービスを利用してきた世代が高齢者になれば、リユースサービスの利用に抵抗感が少ない人はますます増えていきます。

そのとき顧客に対して的確なサービスを提供するために、今の時点から高齢者をターゲットにしたサービスを準備しておいてもいいかもしれません。