「不用品回収業者が『一般廃棄物収集運搬業許可』を取得するには?」で触れたように、不用品回収業が一般廃棄物収集運搬業許可を取得するのは至難の技です。一方で工場や事務所などの事業活動に伴って出る廃棄物を収集運搬できる「産業廃棄物収集運搬許可」は、比較的取得しやすい許可とされています。
しかしいくら取得しやすいからといっても、それが不用品回収業の役に立たなければ意味がありません。ここではこの産業廃棄物収集運搬許可を取得することによるメリットを解説するとともに、実際に取得するにはどうすればいいのかを解説します。
産業廃棄物収集運搬業許可の取得で何ができる?
産業廃棄物の回収ができる
産業廃棄物収集運搬業許可を取得すると、名前通りビジネスとして産業廃棄物の回収ができるようになります。例えば自動車整備工場から出る大量の使用済みタイヤ、木材加工工場から出る木くず、病院から出る作業用の手袋や不要なレントゲンフィルム、レントゲン廃液などです。また大阪府では民泊業者から出る事業系一般廃棄物も産業廃棄物収集運搬業許可を持っていれば回収できることになっています(処分するには一般廃棄物処分業許可が必要)。
不用品回収業というよりは完全に廃棄物回収業になってしまいますが、うまく回収ルートを設定できれば、空荷のまま回収車を走らせなくて済むようになります。不用品回収業においては、空荷の回収車が走れば走るほどコストだけがかさんでいきます。産業廃棄物収集運搬業許可はこのコストを軽減するために一役買ってくれるのです。
条件付きで家電リサイクル法4品目の回収ができる
不用品回収業者が産業廃棄物収集運搬業許可を取得する最も大きなメリットが、「条件付きで家電リサイクル法4品目の回収ができる」ことです。通常一般家庭で使われた使用済み家電は「一般廃棄物」になります。したがって本来回収には一般廃棄物収集運搬業許可が必要です。
しかし家電リサイクル法4品目のエアコン・テレビ・冷蔵庫および冷凍庫・洗濯機および衣類乾燥機には法律上例外が認められており、産業廃棄物収集運搬業許可を持っていれば回収できるという決まりになっているのです。
ただしそこには条件があります。「小売業者又は指定法人若しくは指定法人の委託を受けて」いることです(家電リサイクル法第49条第1項)。ここでの「小売業者」とは家電販売店などの店頭販売・新品販売に限られません。インターネット販売や通信販売、さらにはリユース品を販売するリサイクルショップや質店も含まれます。
したがって産業廃棄物収集運搬業許可を取得していれば、例えばリサイクルショップと提携して家電リサイクル法4品目の回収ができるようになる、というわけです。これは不用品回収業者が事業を拡大するにあたって、非常に大きなメリットになります。
産業廃棄物収集運搬業許可の取得方法
産業廃棄物関連の許可の種類を理解しよう
続いて産業廃棄物収集運搬業許可の取得方法について解説しますが、その前に産業廃棄物関連の許可の種類を理解しておきましょう。まず産業廃棄物関連の仕事には3種類の呼び名があります。
1.産業廃棄物処理業:収集運搬業と処分業をまとめた呼び方
2.産業廃棄物収集運搬業:産業廃棄物を「運ぶ」仕事
3.産業廃棄物処分業:産業廃棄物を適切な方法で「処分する」仕事
このうち産業廃棄物収集運搬業と産業廃棄物処理業には別々に許可制度が設けられており、一方の許可を得ただけではもう一方の業務を行えない仕組みになっています。さらに理解しておくべきなのが、産業廃棄物収集運搬業にも2種類の許可があるという点です。
1.産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含まない)
2.産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含む)
「積替え」とは例えばトラックからトラックに積み直す作業を指し、「保管」とは指定した場所に産業廃棄物を保管することを指します。こうした作業を実際に行う予定がある場合は産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含む)の許可取得が必要になります。
一方で回収場所からそのまま中間処理施設や最終処分場などに運び込むという場合は産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含まない)を取得するだけでかまいません。家電リサイクル法4品目をリサイクルショップなどと提携して回収する場合は、産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含まない)の許可を得ていれば十分です。
また産業廃棄物処分業や産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含む)の許可を取得するとなると、適切な処分のための施設や保管場所などのほか、役所への事業計画の提出や周辺住民との合意など手間と時間が大幅に増えてしまいます。
産業廃棄物関連の事業を本格化するのであればともかく、不用品回収業者としてはまず産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管を含まない)の許可を考えましょう。
産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管なし)許可の取得の流れ
以下では産業廃棄物収集運搬業(積替え・保管なし)許可の取得の流れを解説していきます。
許可申請をする前に満たすべき4つの要件
許可を得るためには各都道府県や政令市の担当窓口に申請に行く前に、まず以下の4つの要件を満たしておかなくてはなりません。
1.「欠格要件」に該当しない。
一般廃棄物収集運搬業許可と同じ廃棄物処理法第7条第5項の以下の10項目に該当する者のほか、暴力団関係者を指します。なお法人として申請する場合は、役員や株主・出資者、さらに副店長などの使用人も含まれます。
1. 精神障害があるなどの理由で判断能力がないとされる者(成年被後見人、被保佐人)または自己破産をしたまま復権していない者。
2. 禁固刑以上の前科があり、服役を終えてから5年未満の者。
3. 廃棄物処理法をはじめとする関連法令に基づく処分を受けてから5年未満の者、または暴力団対策法に基づく処分を受けてから5年未満の者。
4. 廃棄物処理法・浄化槽法における許可を取り消されてから5年未満の者。
5. 廃棄物処理法・浄化槽法における許可取り消し処分の通知があった日から、実際の処分の有無が決まる日までの間に事業廃止の届出をした者のうち、その届出から5年未満の者。
6. 5の届出に該当する事業者の役員や使用人(支店長など)だった者のうち、その届出から5年未満の者。
7. 一般廃棄物収集運搬業の業務において、不正または不誠実な行為をする可能性がある者。
8. 申請者が営業能力のない未成年者で、その代理人が1~7に該当する者。
9. 申請者が法人で、役員や使用人に1~8に該当する者がいる者。
10. 申請者が個人で、そのうちの使用人に1~7に該当する者がいる者。
2.「指定講習会」を受けている。
許可を申請するには各都道府県および政令市にある「公益社団法人産業廃棄物協会」による講習会を受講し、修了している必要があります。講習会には「新規許可申請講習会」「更新許可申請講習会」などがあり、それぞれ指定の講習会を予約して受講しなければなりません。詳しくはこちらのホームページを参照してください。
3.「経理的基礎」がある。
産業廃棄物の収集運搬を継続的に行える経営状態かも、重要な要件です。具体的には「少なくとも債務超過の状態でなく、かつ持続的な経営の見込み又は経営の改善の見込みがある」ことが求められます。
4.収集運搬に必要な「車両」「容器」「駐車場」がある。
回収した産業廃棄物が飛び出したり、流れ出したり、悪臭が漏れたりしないような車両が必要です。また回収した廃棄物が互いに混ざってしまわないような容器や、車両を停めておく駐車場も必要となります。
許可申請に必要な書類
これらの4つの要件を満たして初めて、必要書類を準備し、提出する段階に入ります。必要書類は法人として申請する場合と、個人で申請する場合で若干違いがあります。以下の一覧で確認しておきましょう。
法人に必要な書類 |
---|
許可申請書 |
定款(現行のもの) |
履歴事項全部証明書 |
指定講習会修了証の写し |
住民票(本籍地、国籍記載、マイナンバーは省略) |
登記されていないことの証明書 |
事業の全体計画 |
運搬施設の概要 |
収集運搬業務の具体的な計画 |
環境保全措置の概要 |
運搬車両の写真 |
車検証の写し |
本店、事務所、事業所、駐車場の地図 |
事業開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類 |
法人税の納税証明書(直近3年分) |
確定申告書の写し(直近3年分) |
決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表) |
誓約書(押印) |
個人に必要な書類 |
---|
許可申請書 |
指定講習会修了証の写し |
住民票(本籍地、国籍記載、マイナンバーは省略) |
登記されていないことの証明書 |
事業の全体計画 |
運搬施設の概要 |
収集運搬業務の具体的な計画 |
環境保全措置の概要 |
運搬車両の写真 |
車検証の写し |
本店、事務所、事業所、駐車場の地図 |
事業開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類 |
所得税の納税証明書(直近3年分) |
確定申告書の写し(直近3年分) |
資産に関する調書 |
誓約書(押印) |
許可申請に必要な手数料と許可が下りるまでの日数
産業廃棄物収集運搬業許可の新規申請に必要な手数料は、2018年1月現在で8万1,000円。必要書類を提出してから許可・不許可の結果が出るまでの標準日数は60日となっています。慌てて準備をしても、許可を得た状態で営業するまでには2ヶ月ほどかかるということです。許可が必要な事業をスタートさせようとする際は、事前に申請の準備をしておくようにしましょう。
産業廃棄物収集運搬業許可は事業の幅を広げてくれる
産業廃棄物収集運搬業許可を取得できれば、確実に不用品回収業者としての事業の幅が広がります。しかし指定講習会を受け、さらに大量の書類を揃えて間違えることなく記入し、役所に提出しに行くというのは、すでに不用品回収業を運営している人にとってはかなりの労力です。
人手に余裕があるなら別ですが、一般的には行政書士などの専門家に依頼するのが現実的な方法といえます。もちろん行政書士に依頼するのもタダではありませんから、コスト面も慎重に検討しつつ、自社にとって最良の選択をしましょう。