古紙ダンボール

専ら物とは新聞などの古紙や古着などの古繊維、アルミ缶などの古銅を含む鉄くず、空き瓶類の4品目を指す廃棄物ですが、収集運搬・処分のための許可が不要な廃棄物処理法の例外とされています。

しかし許可が不要だからといってどんな風に扱っても良いというわけではありません。ここでは専ら物の法律的な定義や取り扱い上の注意点、そして不用品回収業者との関係について解説します。

INDEX
  1. 専ら物=専ら再生利用の目的となる廃棄物
    1. 専ら物の法律上の定義と「許可不要制度」
    2. 「専ら物」の拡大解釈はできない
  2. 「専ら物は許可不要」の意味
    1. 専ら物の例外はなぜ生まれたのか?
    2. 「新規参入」「兼業」は許可が必要?
  3. 「専ら物ならどう扱ってもOK」ではない!
    1. 処分方法は「マテリアルリサイクル」であること
    2. 「委託契約書(受託業務終了報告)」を作成すること
  4. 不用品回収業者と専ら物
  5. 不用品回収業者はリスクを理解して取り扱いを決めよう

専ら物=専ら再生利用の目的となる廃棄物

専ら物の法律上の定義と「許可不要制度」

専ら物の正式名称は「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物または一般廃棄物」。具体的には昔から再生利用目的に収集運搬・処分されてきた新聞などの古紙や古着などの古繊維、アルミ缶などの古銅を含む鉄くず、空き瓶類の4品目を指します。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法、廃掃法)では、専ら物について以下のように記載しています。

一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
引用:第7条第1項

一般廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
引用:第7条第6項

この2つの条文において、収集運搬・処分ともに許可を受けなくても一般廃棄物としての専ら物を取り扱うことができるとされています。また第14条の「産業廃棄物処理業」の項目では、産業廃棄物としての専ら物の取り扱いについても、収集運搬・処分ともに許可不要とされています。

「専ら物」の拡大解釈はできない

否定する男性

ところで第7条と第14条ではいずれも専ら物を「専ら再生利用の目的となる廃棄物」としてしか規定しておらず、専ら物が具体的に何を指すのかについての法的な考え方は明記されていません。

この点を利用してペットボトルなどの資源ごみを専ら物であるとする主張もありますが、実はこれは間違いです。なぜなら昭和46年に出された通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について(昭和46年10月16日環整第43号)」によって、前述した4品目が明記されているからです。

産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。
引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について(昭和46年10月16日環整第43号)

つまり廃棄物処理法に書かれている「専ら再生利用の目的となる廃棄物」とは、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維の4品目であるということです。確かに法律上専ら物がこの4品目であるという根拠はないものの、この通知によってこの4品目のみを専ら物とする形で法律が運用されているため、「専ら物」を拡大解釈すると無許可営業者とみなされる可能性があります。

「専ら物は許可不要」の意味

専ら物の例外はなぜ生まれたのか?

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について(昭和46年10月16日環整第43号)」の後半部分には「専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならない」と書かれていました。「専門に取り扱っている既存の回収業者等」という言い回しが使われているのは、この通知が出された昭和46年当時の時代背景が反映されているからです。

当時の日本は昭和45年に廃棄物処理法が施行されたばかりで、法律やその作成者たちにはまだ「廃棄物=捨てられるだけのもの」という認識しかありませんでした。そのため廃棄物処理法自体も、焼却・粉砕などの処理をして埋め立てることを前提に組み立てられていました。

しかし専ら物に分類されるような品目は、廃棄物処理法ができる前から資源回収・再生利用の対象となっていて、それらを生業とする回収業者やリサイクル業者といった流通経路が成立していました。行政としてはこうした既存の流通経路を無理やり廃棄物処理法のルールに当てはめるのではなく、例外として認めて活用した方が無駄がありません。

そうした背景から生まれたのが専ら物の許可不要制度であり、「専門に取り扱っている既存の回収業者等」という言い回しだったのです。

「新規参入」「兼業」は許可が必要?

許可の疑問

ところがこの「専門に取り扱っている既存の回収業者等」という言い回しからは、ともすると新規参入や兼業の回収業者は専ら物の許可不要制度の適用外という印象を受けてしまいます。つまり専ら物を取り扱う際に許可が要らないのは昭和46年以前に専門的に専ら物を取り扱ってきた回収業者のみであり、それ以降に新規参入してきた回収業者や、専ら物以外の品目を取り扱ってきた回収業者は許可が必要だという解釈ができるのです。

この解釈が成立してしまうと、現代の回収業者の大半は許可の取得が必要になります。解釈の揺らぎが生まれた結果、自治体ごとに見解のばらつきが生まれ、「A自治体では新規参入・兼業の回収業者でも許可は要らないが、B自治体では許可が必要」という状況になってしまいます。こうした事態を受けて、2009年3月31日の内閣府規制改革会議の閣議決定の中で、次のような結論が下されました。

使用済衣料品・繊維等のリサイクルに係る店頭回収・運搬・処分について【20年度措置】
複数の企業が環境への取組として、衣料製品を始めとする古繊維のリサイクルのために店頭回収を試みている。しかし、回収した古繊維の取扱に関して地方公共団体の見解にばらつきがあるため、全国展開できないという問題が発生しており、古繊維の回収が進まないという指摘がある。したがって、古繊維は、廃棄物処理法に定めのある「専ら再生利用の目的となる廃棄物(いわゆる専ら物)」に当たる場合、収集運搬及び処分業の許可は不要であり、例えば衣類の販売等、ほかの業を主として行っていても、同様に業の許可は不要であることを周知する。(Ⅲ環境ア 21)
引用:規制改革推進のための3か年計画(再改定)

この閣議決定によって、新規参入・兼業の回収業者でも専ら物を取り扱えるというお墨付きが与えられたと言えます。また本来産業廃棄物を取り扱う際は産業廃棄物管理票(マニュフェスト)の交付が必須になりますが、廃棄物処理法施工規則の「第8条の19 3号」によって専ら物の場合は不要であると明確に定められています。

このように専ら物の取り扱いについては、廃棄物として専ら物を料金をもらって回収した場合でも、各種許可は不要であり、産業廃棄物の場合もマニフェストが不要であるということが、公に認められているのです。

「専ら物ならどう扱ってもOK」ではない!

専ら物は確かに各種許可も不要であり、マニュフェストも必要ありません。しかしこれは「専ら物ならどのように扱っても構わない」という意味ではありません。専ら物を取り扱う場合にも、以下の2点は遵守しなくてはなりません。

1.処分方法は「マテリアルリサイクル」であること。
2.産業廃棄物として委託を受ける場合、「委託契約書(受託業務終了報告)」を作成すること。

この2点をしっかりと実践してはじめて、許可を取らずに専ら物を廃棄物として取り扱えるようになります。

処分方法は「マテリアルリサイクル」であること

プレスされたアルミ缶

マテリアルリサイクルとはマテリアル(物)からマテリアル(物)へと再利用を行うことを指します。例えば古紙を再利用して新聞用紙や包装用紙を作る場合や、アルミ缶を再利用して自動車部品やフライパンを作る場合に使われる言葉です。

なぜ専ら物を取り扱う際にマテリアルサイクルが条件になるのかというと、それは専ら物が「再生利用目的だけに供される廃棄物」だからです。仮にその他の処分方法、例えば熱回収を含む焼却や、埋め立てなどだった場合、それは単なる「廃棄物」としての扱いになるため、「再生利用目的だけに供される廃棄物」にはなりません。このような場合は収集運搬・処分についての許可が必要になります。

「委託契約書(受託業務終了報告)」を作成すること

専ら物の取り扱いは原則廃棄物処理法の適用外になるため、仮に専ら物の取り扱い業者が廃棄物処理法違反をしていても、そもそも許可が不要なので許可取り消しなどの処分ができません

そこで昭和51年の廃棄物処理法改正で「委託基準規定(再委託の禁止)」と平成3年の「委託契約書(受託業務終了報告)の義務化」を、専ら物の取り扱い業者にも適用できるよう冒頭で見たような第7条のような例外規定を盛り込まずに施行したのです。そのため専ら物の取り扱い業者も委託契約書(受託業務終了報告)を作成しなければなりません

不用品回収業者と専ら物

不用品回収業者

通常の廃棄物と比べて自由に取り扱える専ら物ですが、不用品回収業者が専ら物を取り扱うのはどういった場面で、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

不用品回収業者が専ら物を取り扱う場面としては、基本的に家具や家電の回収に行った際に依頼者から「この古新聞も一緒にお願いできないか」などといったケースになります。いわば「ついで」に回収する場合が多く、人件費や利益の観点から専ら物のためだけに回収に行くというケースはほとんどありません。

回収する場合は処分費用を受け取って回収しても構いませんし、廃品回収のようにトイレットペーパーなどと交換しても構いません。後者の場合は物々交換が成立するので専ら物は廃棄物ではなくなり、有価物としての取り扱いになるため、確実に廃棄物処理法の適用外で取引を行うことができます

注意点は大きく2つあります。

第一に通常の廃棄物なのか、専ら物なのかという区別を明確にすることです。例えば室内で保管していた新聞紙は専ら物として回収できますが、室外で保管していて日焼けや雨で状態の悪い新聞紙は専ら物ではなく通常の廃棄物としての扱いになります。前者は許可なしで収集運搬できますが、後者は収集運搬するにも許可が必要になるため、許可なしで取り扱うと無許可営業とみなされる可能性があります。

第二に回収する場合は専ら物の取り扱いルールをしっかりと守ることです。産業廃棄物として収集運搬する場合は、適切に再利用してくれる業者に委託するとともに、委託契約書を取り交わすようにしましょう。

不用品回収業者はリスクを理解して取り扱いを決めよう

専ら物の取り扱いは、法律や通知によって「許可不要」「マニュフェスト不要」となっています。そのため各種許可を持っていない不用品回収業者でも取り扱いができますが、回収する物の状態によっては通常の廃棄物としての取り扱いになるなど、グレイゾーンも少なからず存在します。取り扱いの可否を考える際は、リスクをしっかりと理解したうえで判断するようにしましょう。