料金
依頼者の自宅などに出張回収に行く場合、一歩間違えると「違法な不用品回収業者」になってしまう可能性があることをご存知でしょうか。

というのも依頼者が不用品回収業者に支払う料金は内訳が不透明なことも多く、それが原因で「ぼったくられているのではないか」と怪しまれて、勝手に「あそこは違法な不用品回収業者なんだ」と勘違いされる危険があるからです。また料金設定の仕方によっては不用品回収業者自身が法に従って営業しているつもりでも、実際には違法な営業になっている場合もあります。

ここでは依頼者の不安を解消するための方法を紹介するとともに、知らぬ間に違法な営業をしてしまわないためのポイントを解説します。

INDEX
  1. 不用品回収業者が「怪しまれる」理由
  2. 「明瞭会計」が余計な不安を解消する
    1. 不安を解消する「わかりやすい料金システム」
    2. 「明瞭会計」は不用品回収業者の身を守る
  3. 「違法な不用品回収業者」になってしまう3つのNGワード
  4. 「正しい料金設定」を提示して、依頼者に安心してもらう

不用品回収業者が「怪しまれる」理由

回収に向かうための交通費や、回収に必要な人件費、そこに会社としての利益を計算すれば、不用品回収には一定の料金が発生して当然です。全うな営業をしている不用品回収業者からすれば「怪しまれる理由なんてない」と思うでしょう。しかし全うな営業をする不用品回収業者がいる一方で、そうではない不用品回収業者がいることも事実です。

例えば拡声器で「なんでも無料で回収します」と町内を巡回し、依頼された品物をぎっちりトラックに積み込んだ後に「回収は0円ですが、2階からトラックに積み込んだ手数料として5万円をいただきます」と法外な金額を要求する業者もいます。こうした業者は、依頼者が「そんなお金は払えない」と言うと「では元に戻すのはご自分でお願いします。こちらで荷降ろしする場合は追加で料金をいただきます」と半ば脅しのような手口を使います。

高齢者

このようなやり方は当然違法ですが、同様の手口で被害にあう人の数は増加傾向になります。さらにこういった不用品回収業者がメディアで取り上げられたり、自治体のホームページなどで注意を喚起されたりするようになると、不用品回収業者のイメージが悪くなっていきます。その結果、依頼者がわけもなく不用品回収業者を怪しむようになっていると考えられます。

「明瞭会計」が余計な不安を解消する

ここで「余計な不安を抱く方が悪い」と言っても話が始まりません。必要なのは「この逆境を利用して、依頼者にファンになってもらおう」という発想です。そのための方法の一つが、料金システムを明確にすることです。

不安を解消する「わかりやすい料金システム」

多くの不用品回収業者は「作業料金として○○円いただきます」という程度にしか、料金システムを提示していません。相手が不用品回収のプロなら、こうした簡単な説明でも十分でしょう。しかし大半の依頼者は不用品回収業がどのようなビジネスなのかを知りません。そのため、この説明ではなぜ作業料金がその金額になるのかがわからないのです。それがわからなければ「もしかして、ぼったくられているのではないか」と不安になっても仕方がありません。

しかし例えば以下のようにして、依頼者からも料金システムがわかりやすいようにしてみるとどうでしょうか。

<養生作業代として>
○○○○円
※一部屋ごとに△△△円いただいております。

<運び出し作業代として>
××××円
※基本料金□□□□円。階層が増えるごとに◇◇◇◇円、エレベーターがない場合は階層が増えるごとに▽▽▽▽円いただいております。

<搬出作業代として>
▲▲▲▲円
※大型家具・家電の場合は1個につき■■■■円、小型家具・家電の場合は無料となっております。

<仕分け作業代として>
●●●●円
※買取可能商品と買取できない商品を仕分ける際の作業代金としていただいております。

これならばどんな作業にどれだけお金がかかっていて、なぜその料金になるのかが一気にわかりやすくなります。さらに口頭で「人件費や交通費などの関係で、こちらの料金をいただいております。ご理解いただければ幸いです」などと伝えれば、依頼者の不安がより緩和されるでしょう。

何より重要なのは、こうした情報をできるだけ早い段階で伝えておくことです。可能ならばメールや電話で問い合わせがあった時点で見積もりを出し、了承を得ておきます。それが無理でも作業を開始する前に料金システムと見積もりを提示し、依頼者の承諾を得ておきましょう。

そうすればクレームになったり、「違法な不用品回収業者」というレッテルを貼られたりすることもありませんし、「安心してお金を払える業者だ」とリピーターになってくれる可能性もあります。

依頼者に料金システムを伝えないメリットはほとんどありませんが、伝えなければ依頼者の不安は高まる一方です。それならばできるだけわかりやすく料金システムを提示して、明瞭会計にする方が何倍も効率的ではないでしょうか。

「明瞭会計」は不用品回収業者の身を守る

依頼者にもわかりやすい料金システムは、依頼者だけでなく不用品回収業者自身にとっても大きなメリットがあります。なぜならあらかじめ料金システムを提示しておくと、余計なクレームに対応しなくて済むからです。料金システムを伝えておかなかったことで起きたトラブルとして、次のような実例があります。

ある不用品回収業者にある依頼者から回収の依頼が入りました。不用品回収の依頼者というのは得てして不用品の量を実際よりも少なく伝えがちです。この依頼者も同様で、依頼の電話で半分近くも不用品の量を少なく伝えました。これに対して不用品回収業者は見積もりを提示し、依頼者も「その料金なら」と回収を依頼します。

しかし実際に回収に行ってみると、倍近くの回収品があります。不用品回収業者はその場で再見積もりを出しましたが、当然料金も倍近くになります。それを聞いた依頼者はこの見積もりを承諾し、不用品回収業者は無事回収を終えました。

ところが後日この依頼者が不用品回収業者を相手取り、裁判を起こしたのです。言い分は「不用品の量が変われば料金も変わるとは言っていなかった。にもかかわらず高圧的な態度で高額な見積もりを出してきた。恐ろしくて断ることができなかったが、やはり納得がいかない」というもの。不用品回収業者からすればとんでもない言い分ですが、なんと裁判は依頼者側の勝訴。不用品回収業者は賠償金を支払っています。

これは事前に「不用品の量が増えたらそれだけ料金が必要になる」「これだけの量が増えると、これだけの料金になる」という情報を、不用品回収業者が依頼者側に伝えていなかったから起きてしまったトラブルです。それさえきちんと伝えていれば「不用品の量が変われば料金も変わるとは言っていなかった」という依頼者側の言い分は成立しなくなるからです。

またあらかじめ料金システムを伝えていれば、依頼者側が常識を超えて不用品の量を少なく伝えることもしません。そんなことをしても、実際に回収する際に正確な料金を請求されるとわかるからです。わかりやすい料金システムは、不用品回収業者自身を守るためにも必要なのです。

「違法な不用品回収業者」になってしまう3つのNGワード

NGワード

しかしたとえ明瞭会計にしていても、料金システムの中に次の3つのNGワードが入っていると、単なる依頼者の勘違いではなく法律的に「違法な不用品回収業者」になってしまいます。

・ごみ、廃棄物、廃品、粗大ゴミの回収料金
・回収したものを処分するための料金
・回収したものを運搬するための料金

ごみ、廃棄物、廃品、粗大ゴミの回収料金

一般家庭から出たゴミ、廃棄物、廃品、粗大ゴミを回収するためには、一般廃棄物収集運搬業許可が必要です。工場や事業所等の事業活動によって出た廃棄物などに関しても、産業廃棄物収集運搬業許可が必要になります。

そのためこれらの許可を取得していない場合、料金提示の際に「ごみ、廃棄物、廃品、粗大ゴミの回収料金」というワードを使うことはできません。使った時点で許可を取得せずに違法に営業する「無許可営業」になってしまい、最悪の場合懲役刑や罰金刑の対象になる可能性もあります。不用品回収業者ができるのは、原則リユース・リサイクル品の買取のみです。

回収したものを処分するための料金

「処分」の対象になるのは廃棄物です。つまり料金提示の際に「回収したものを処分するための料金」というワードを使った時点で、「自分たちはこちらの品物を廃棄物として回収します」と言っているのと同じなのです。結果、先ほどと同様に「無許可営業」になってしまいます。

不用品回収業者が回収するのはあくまでリユース・リサイクル品。それらは「処分するため」ではなく、「リサイクルショップなどで販売したり、解体してパーツとして売ったりするため」です。そのため「回収したものを処分するための料金」というワードを使ってはいけません。

回収したものを運搬するための料金

「回収したものを運搬するための料金」を受け取るためには、各種廃棄物収集運搬業か一般貨物自動車運送事業の許可、もしくは貨物軽自動車運送事業の届出が必要になります。これらの許可を取得していなければ、ここでもまた無許可営業とみなされてしまいます。また回収品別に引取り料金を設定する場合も、同じく「回収したものを運搬するための料金」とみなされる場合もあります。

料金システムをホームページに掲載したり、依頼者に提示する場合はこれらのNGワードを使わないように注意しましょう。

「正しい料金設定」を提示して、依頼者に安心してもらう

依頼者からすれば不透明になりがちな不用品回収業者の料金システムですが、それをはっきりと提示しておけば安心して依頼してもらえるようになります。ただしその場合は金額面でも法律面でも「正しい料金設定」をすることが大前提です。特に法律面では、不用品回収業者が受け取っていい料金と受け取ってはいけない料金を理解し、NGワードに触れないように注意しましょう。