悩む作業員

「依頼者の自宅に回収に向かい、その場では買取可能と判断して持ち帰ってみたものの、改めて検品してみると売り物にならない回収品だった」不用品回収業を営んでいれば、こうした出来事は日常茶飯事です。

ではこの「売り物にならない回収品」は、どのように取り扱うのが正しいやり方なのでしょうか。ここでは法律的に正しい取扱方法を解説するとともに、売り物にならない回収品の取り扱いも含めて法を犯してしまった不用品回収業者がどうなるのかを紹介します。

INDEX
  1. 「売り物にならない回収品」の正しい取り扱い
    1. 「売り物にならない回収品」=廃棄物
    2. 本当に「売れる」と思って回収したか?
    3. 「委託基準違反」に要注意
    4. 正しく取り扱わないと「違法業者」になってしまう
  2. 最高3億円の罰金刑!違法な不用品回収業者の末路
    1. 不用品回収業者に関する罰則規定
    2. 不用品回収業者に関する行政処分
    3. 行政処分には正しく対応するのがベスト
  3. 法律を正しく理解し、正しく営業する

「売り物にならない回収品」の正しい取り扱い

「売り物にならない回収品」=廃棄物

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)によれば、廃棄物とはごみ、粗大ゴミ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形状または液体のものを言います。したがって「売り物になると思って一般家庭から買取・回収してきたソファが、回収後に確認してみたら大きな傷があって売り物にならなかった」といった場合、このソファは立派な廃棄物となります。そのため売り物にならない回収品は、基本的に廃棄物として処理しなければなりません。

しかし不用品回収業者が売り物にならない回収品を廃棄物として処理する場合、それは単なる廃棄物ではなく、事業系一般廃棄物もしくは産業廃棄物として処理する必要があります。産業廃棄物とは事業活動によって出るゴミのうち、廃棄物処理法に定められた20種類のゴミを指し、事業系一般廃棄物とは産業廃棄物以外のゴミのうち事業活動によって出るゴミを指します。

スタッフ同士の相談

この2つは単純に区別できるものではなく、同じ回収物でも自治体ごとにどちらに分類するかが違っているケースもあります。そのため初めて処理する品物の場合は、各自治体の廃棄物対策課などに確認を入れるようにしましょう。確認がとれたら、それぞれの処分業許可を取得している業者に処分を委託して、処理完了です。

本当に「売れる」と思って回収したか?

一見簡単に思える売り物にならない回収品の処理ですが、2つの注意点があります。ひとつは、本当に「売れる」と思って回収したということを証明できるのかという点です。

例えば一般家庭からの回収後、家具なら状態の再チェック、家電なら動作確認などの手続きを踏まずに、すぐさま処分業者に持ち込んでいたとしましょう。するとこれはリユース品・リサイクル品として買い取ったのではなく、一般廃棄物として収集・運搬しているとみなされてしまいます。

逮捕

一般廃棄物の収集・運搬には、一般廃棄物収集運搬業許可が必要になりますから、この行為は違法な行為とみなされ、法的な処分を受けることになります。あるいは最初から廃棄物であると認識していて回収すれば、当然これも無許可営業とみなされ、法的な処分の対象になります。

こうした事態を防ぐためには、「自分たちは廃棄物は回収せず、リユース・リサイクルが可能な品物だけを買取・回収する」ということをあらかじめ依頼者にはっきりと伝えておいたり、トラックの荷台に幌をかけるなどして一見して「廃棄物を収集・運搬していない」とわかるようにしたりして、本当に「売れる」と思って回収しているという体裁を整えておく必要があります。

「委託基準違反」に要注意

もうひとつの注意点は、処分の委託先に適切な業者を選べているかという点です。適切な業者かどうかを確認する主な基準は以下の2つです。

1.各自治体から許可を受けた業者である

事業系一般廃棄物の処分には、一般廃棄物処分業許可が必要です。また産業廃棄物の処分には一般廃棄物処分業許可とは別に、産業廃棄物処分業許可が必要になります。委託する際には委託先が有効な許可証を持っているかを事前に確認するようにしましょう。

2.委託する廃棄物が、業者が許可された事業の範囲で処理できるものである

処分業許可を受けた業者は自治体に申請した「事業の範囲」の中でしか事業を営めません。そのため委託する際は許可証を確認して、委託先が許可に沿った処理をしているのかを確認する必要があります。

ただこの「事業の範囲」の名称は各自治体が任意で決めているため、一見しただけでは許可に沿った処理をしているのかがわからない場合もあります。そのような場合は、管轄の自治体に問い合わせるなどして「この業者は大丈夫だ」と確信してから委託するようにしましょう。

この2つの基準を満たしていない業者に委託した場合、委託先の業者はもちろんですが、委託をした不用品回収業者も「委託基準違反」として法的な処分の対象となります。

正しく取り扱わないと「違法業者」になってしまう

売り物にならない回収品を「忙しいから」という理由で放置していたり、「処分にはコストがかかるから」という理由で不法投棄したりすれば、違法な不用品回収業者として罰せられる可能性があります。法律に則って健全に不用品回収業を営むには、売り物にならない回収品を正しく取り扱わなければならないのです。

しかし残念ながら法律を守らずに営業を続けた結果、行政から処分を下されたり、刑事罰を課せられる不用品回収業者もいます。以下では廃棄物処理法の罰則規定や行政処分の内容を紹介するとともに、万が一法に違反してしまったときの考え方について解説します。

最高3億円の罰金刑!違法な不用品回収業者の末路

不用品回収業者に関する罰則規定

私たちの衛生的な生活を維持するためには、廃棄物の適切な処理が必要不可欠です。逆に言えば廃棄物の適切な処理を妨げる存在は、衛生的な生活を脅かす存在なのです。廃棄物処理法は完璧に現状の環境問題に対応できているわけではないものの、基本的には廃棄物の適切な処理を促進するための法律であり、衛生的な生活を脅かす存在を取り締まるための法律といえます。

では具体的にどのような罰則が定められているのでしょうか。廃棄物処理法の罰則規定から、特に不用品回収業者に関するものを以下に抜粋してみましょう。

罰則規定 該当する行為
5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又はこれの併科 ・無許可業者に廃棄物処理を委託した。
・廃棄物の不法投棄をした。
・廃棄物の不法焼却をした。
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれの併科 ・廃棄物の処理を、委託基準に反した方法で委託した。
・行政からの改善命令・使用停止命令に違反した。
・「不法投棄」又は「不法焼却」する目的で、廃棄物を収集運搬した。
6ヶ月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金 ・管理表を交付しなかった、又は虚偽の記載をして管理表を交付した。
・管理表又はその写しを保存しなかった(保存期間5年)。
・虚偽の記載をして管理表を交付した。
・電子マニフェストを使用するために、情報処理センターに虚偽の登録をした。
・行政からの管理表に関する規定遵守の韓国に従わず、更にその勧告に関する措置命令にも違反した。

なお法人の廃棄物の不法投棄と不法焼却に関しては、3億円以下の罰金が課せられます。また不用品回収業者が売り物にならない回収品などを産業廃棄物として処分する場合は、原則として管理表(マニフェスト)の交付が必要になりますが、これを怠った場合にも罰則規定が設けられています。

不用品回収業者に関する行政処分

不用品回収業者は罰則規定に該当する行為だけではなく、行政処分に該当する行為についても注意が必要です。廃棄物処理法に関する行政処分には以下の3種類があります。

1.許可の取り消し

産業廃棄物収集運搬業許可を取得している不用品回収業者は、欠格要件に該当したり、違反行為の実行・要求・教唆をしたりすると、許可の取り消しを言い渡されることがあります。

2.事業の停止

違反行為の実行・要求・教唆をした場合、事業の停止を言い渡されることがあります。

3.措置命令

無許可業者等への処分委託を行ったり、管理表を発行しなかったりした場合などに、行政によって期限を定めて状況の改善などの措置を命じられることがあります。これに応じない場合は廃棄物処理法第25条第1項第5号に基づいて5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金が科せられます。

1の「許可の取り消し」は、そもそも許可を持っていなければ受けることのない処分ですが、2の「事業の停止」と3の「措置命令」は許可の有無にかかわらず受ける可能性があります。

行政処分には正しく対応するのがベスト

行政処分というのは、基本的には段階を追って言い渡されるものです。その段階というのは次の通りです。まず平常時に立ち入り検査や報告の徴収が行われます。ここでの違反が軽微な場合はその場の口頭指導レベルで済みますが、明確な違反があった場合は文書で通知が送られ、改善計画書の提出が求められます。

しかしこれでも違反行為がなくならない場合になって初めて「改善命令・措置命令」が実施されます。そしてそれでも改善されない場合に、許可の取り消しや事業の取り消し、刑事罰の要求へと発展するのです。これはつまり、行政処分に正しく対応していれば、大ごとにはならないということです。

廃棄物

かつて山形県のある産業廃棄物処理業者が、2012年9~11月にかけて山形県鶴岡市の個人住宅の一般廃棄物を、無許可にもかかわらず収集・運搬し、自社の事業用地に乱雑に放置していたところ、山形県庄内総合支庁から何度も状況の説明を求められるという事件がありました。

しかしこのときこの業者は行政の要求に応じなかったばかりか、引き続き一般廃棄物の収集・運搬を続けます。結果刑事告発に発展し、懲役1年・執行猶予3年、罰金50万円の有罪となっています。

このことからも、行政処分に正しく対応するのがベストだということがわかります。

法律を正しく理解し、正しく営業する

不用品回収業に限らず、法律はビジネスを営むうえで最低限のルールです。それを守らずに正しく営業をしている業者を出し抜いても、必ずその報いを受けることになります。ここで解説した内容を正しく理解し、一点もやましいところがない営業を心がけましょう。