謝る男性。

不用品回収業やリサイクルショップ業を営んでいれば、お客様とのトラブルがしばしば起こります。その際に行き当たりばったりで対応してしまうと、対応を間違えてますますトラブルが複雑化する可能性もあります。

ここではそのような事態を防ぐために、不用品回収業やリサイクルショップ業でよくあるトラブルをあげ、どのように対応すれば自社の利益を守りながらお客様に納得してもらえるかを紹介します。

INDEX
  1. 売ろうと思ったけどやっぱりやめた
    1. 対応1:承諾する
    2. 対応2:経費だけを請求する
  2. もうちょっと買取金額あげてよ
    1. 対応1:お断りする
    2. 対応2:品物に見合った範囲で再度金額を提示する
  3. 買ってから汚れに気付いたので返品したい
    1. 対応1:返品対応する
    2. 対応2:サイトやPOPなどに詳細な状態説明を入れる
  4. 自社にとっての正解を決めておこう

売ろうと思ったけどやっぱりやめた

<事例>

法人のお客様が事務所の移転に際して、家電や家具などを一式買い取って欲しいとのことで、見積もりを依頼されました。そこで不用品回収業者Aは担当者を訪問させ、見積もりを提示します。それを見たお客様は買取を依頼し、担当者はその場で日程を調整しました。後日、調整した日に人やトラックを手配したところ、お客様から「売ろうと考えていたが、考え直すことにした」とキャンセルの申し出がありました。

これは不用品回収業者だけでなく、リサイクルショップにも起こりうる状況です。さてどのように対応すれば、利益を守りながらお客様にも納得してもらえるのでしょうか。

対応1:承諾する

最もシンプルな対応は、「かしこまりました。また機会がありましたらご連絡をお待ちしております」などと言って、お客様の申し出を承諾する方法です。それ以上お客様とのトラブルが複雑になる可能性がなくなるため、トラブルに対応する時間や手間を省略できるという点がこの方法のメリットです。

しかし一方で、人やトラックを手配したことによって発生する経費分は丸ごと損失になってしまいます。そのまま近隣の出張買取業務に融通できれば問題ありませんが、そんなに都合のいい状況は早々起こりません。そのためこの方法は、お客様の納得は得られるものの、自社の利益を守るのは難しいと言えます。

対応2:経費だけを請求する

請求書。

では例えば「かしこまりました。つきましては、今回手配させていただいたスタッフやトラックの費用の負担をお願いします」といった経費だけを請求する方法はどうでしょうか。これならばキャンセルによる経費分の損失をカバーすることができます

とはいえこの対応は、お客様によっては「何のサービスも受けていないのに、お金を払わないといけないのか」とさらなるトラブルに発展する可能性があります。つまり単に経費を請求するだけでは、自社の利益は守れるものの、お客様の納得を得られないのです。

しかしあらかじめ契約書と口頭で「○日前のキャンセルは、発生したスタッフ・トラック等の費用の負担をお願いいたします」などと伝えておき、その場でお客様の同意を得ておけば、経費の請求がさらなるトラブルにつながるようなことは防止できます。

急なキャンセルに頭を悩ませないためにも、マニュアルや契約書などをあらかじめ準備しておくといいでしょう。

もうちょっと買取金額あげてよ

<事例>

あるブランドのバッグをリサイクルショップBの店頭に持ち込み、買取を希望されたお客様がいました。リサイクルショップBの店員はこれを鑑定・査定したあと、お客様に買取金額を提示しました。するとお客様から「うーん……この金額では売れないですね。もう少し高くなりませんか? 」と買取金額アップの申し出がありました。

こちらもリサイクルショップ、不用品回収業者いずれにも起こりうる状況です。買取金額は自社の利益に直結する数字です。その利益を守りながら、お客様に納得してもらうにはどうすればいいでしょうか。

対応1:お断りする

マニュアルとして導入しやすい対応は「申し訳ございません。こちらの金額は相場等を考慮したうえで計算しておりますので、これ以上あげさせていただくことはできかねます」などと言って、お客様の申し出を断る方法です。

この対応であれば、対応するスタッフの経験や知識などに関係なく一律で対応できるため、上司がわざわざ対応する必要もなく、スタッフを教育する手間も省けます。ただし、仮にその品物が売れ筋商品で、買取金額を引き上げても確実に利益が見込める場合、この対応ではせっかくの買取チャンスを逃してしまうことになります。

そのためお客様の申し出を一律で断る方法は、お客様の納得を得られないだけでなく、自社の利益を損なう可能性がある方法と言えるでしょう。

対応2:品物に見合った範囲で再度金額を提示する

天秤。

これに対して「かしこまりました。それでは○円加算させていただいて、こちらの金額ではいかがでしょうか」という対応であれば、お客様にも納得していただいたうえで買い取れる可能性があるため、同時に自社の利益も確保できます。

しかしこの対応には、経験や知識のないスタッフが行うと、必要以上に買取金額を引き上げてしまうリスクがあります。例えば状態の良い高級ブランドのバッグであれば、多少買取金額を引き上げても買い手がありますが、高級ブランドのデザインに似せたバッグの場合は、たとえ状態が良くても買い手がつかない傾向にあります。にもかかわらず、対応したスタッフが高級ブランドのデザインに似せたバッグの買取金額まで引き上げてしまえば、自社にとってはマイナスになります。

これを防ぐためにはスタッフ教育に力を入れるか、経験と知識が豊富な上司に相談する仕組みを作るのが効果的です。簡単にできるのは後者ですが、業務の効率化を長期的な目線で考えるのであれば、時間をかけてでも各スタッフが正しい判断ができるように教育をしていく必要があるでしょう。

買ってから汚れに気付いたので返品したい

<事例>

リサイクルショップCに来店したお客様は、店頭に置いていたソファを気に入り、購入を決めました。しかしソファを配送してから数日経ったある日、そのお客様から電話がありました。話を聞いてみると「よく見てみると、お店で見た時には気づかなかった汚れがありました。確かに数日使用はしましたが、そんな汚れをつけた覚えが全くありません」とのこと。担当者が要望を尋ねると「返品したいです」という申し出がありました。

こちらは中古品を販売するリサイクルショップに起こりうるケースです。さてこのケースにおいて、自社の利益を守りつつ、お客様にも納得してもらえる方法はあるのでしょうか。

対応1:返品対応する

トラックと小包。

「かしこまりました。それではお引き取りに伺います」などと言って、お客様の要望に従う方法が、お客様の納得を得るには最も簡単な方法です。

しかし返品によって利益が減少するだけでなく、引き取りを自社で行うのであればスタッフの人件費やガソリン代、配送業者を利用するのであれば送料が必要になります。お客様に引き取りのコストを負担してもらう場合でも、返品による利益減少は避けられません。

そのためこの方法は、お客様の納得は得られるものの、自社の利益を守れない対応だと言えます。

対応2:サイトやPOPなどに詳細な状態説明を入れる

しかし一度お客様からの返品の申し出があれば、断固として拒否するか、もしくは承諾するしかないのも事実です。拒否すれば自社の利益は守れますが、お客様の納得は得られず、結果的に客離れが起きて利益減につながる可能性もあります。

汚れたソファ。

そのためリサイクルショップ側が考えるべきは、いかにして返品を減らし、返品対応にかかるコストを抑えるかということです。その方法の一つが商品の状態をあらかじめよく確認し、サイトやPOPなどに詳細な状態説明を入れるというものです。

こうすればお客様もあらかじめ状態が把握しやすくなるため、購入後に汚れなどに気づいて返品するようなケースを減らすことができます。結果お客様の納得も得られ、返品対応に伴うコストも抑えられます。

ただしこの方法のデメリットは、状態説明を作成するためにかかる時間です。そのため、この時間をできるだけ短縮する工夫が必要になります。例えば状態説明のフォーマットを作ったり、返品の多い品目を特定して、その品目だけに状態説明をつけるようにしたり、もしくは家電や大きめの家具など返品対応に時間のかかる品目にだけ状態説明をつけたりといったやり方です。

返品対応は利益を生まず、コストだけがかかる業務です。そのような業務の負担をできるだけ抑えるためにも、こうした予防策は必要不可欠と言えます。

自社にとっての正解を決めておこう

お客様との間に発生するトラブルへの対応方法は、各業者によって違ってしかるべきものです。なぜなら各業者がどのような方針でお客様に対応しているかによって、最善の対応は変わるからです。

大切なのは、トラブルが起きる前に「このようなケースにおける、自社にとっての正解は何か」を決めておくこと。それさえ決めておけば、いざというときも迷いなく対応できるようになります。ここで挙げたよくあるトラブルを参考に、自社にとっての正解をあらかじめ決めておきましょう。