駐車禁止の標識

出張買取や出張回収をサービスとして展開している場合、必ずと行っていいほど直面するのが駐車場所の問題です。特に市街地の場合は駐車監視員の数も多く、ほんの少し車から離れただけでいわゆる駐禁切符を切られてしまうこともあります。駐禁切符を切られれば罰金を支払わなければなりませんから、それだけでもコスト増につながります。

こうした事態を回避するために、ここでは法律的な観点から正しい路上駐車の考え方を解説します。

INDEX
  1. まずは道路交通法を理解しよう
  2. 駐禁切符を切られないためにやるべきこと
    1. 駐車場の有無は必ず事前に聞いておく
    2. 駐車違反にならない場所も知っておこう
  3. お店などから「営業妨害だ!」と脅された場合の対処法
    1. 路上駐車が営業妨害になる可能性は低い
    2. 別の問題に発展しないよう対応を
  4. まとめ

まずは道路交通法を理解しよう

出張回収や出張回収の際の駐車場所の問題を考えるにあたって、最初に知っておくべきは道路交通法における駐車のルールです。なぜなら出張回収や出張回収を行う業者が出張先で車をとめるとなると、たいていの場合道路交通法上の駐車に該当するからです。

<駐車と停車の法律的な違い>
駐車 ・車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(5分以上)
・運転者が車を離れてすぐに運転できない状態にあること。
停車 車両等が停止することで駐車以外のもの。

出張先では査定や荷物の搬出などを行うために車を離れなければなりませんから、どうしても駐車の定義に該当してしまいます。したがって出張回収や出張回収を行う業者が知っておくべきなのは、どのようなケースで路上駐車が禁止されているかどうかなのです。道路交通法上、路上駐車が禁止されているのは以下の場所です。

1.駐車禁止もしくは駐停車禁止の表示、標識がある場所
2.火災報知器の半径10m以内の場所。
3.自動車専用の出入り口から3m以内の場所。
4.道路工事区域の端から5m以内の場所。
5.消防用機械用具置き場や防火水槽から5m以内の場所。
6.消火栓や指定消防水利の標識などから5m以内の場所。
7.路面電車の線路上
8.坂道の頂上付近
9.トンネルの中
10.交差点、およびその端から5m以内の場所。
11.曲がり角から5m以内の場所。
12.横断歩道および自転車横断帯から5m以内の場所。
13.踏切の端から前後10m以内の場所。
14.安全地帯の左側およびその前後10m以内の場所。
15.バスや路面電車の停留所がある表示版から半径10m以内の場所(運行中)。
16.道路の端から0.75m空けて駐車した状態で、道路側に3.5mの幅が確保できない場所(無余地場所)。

実はこの16の項目全てを当てはめると、日本の道路に合法的に路上駐車できる場所がほとんどないということになります。つまり路上駐車は基本的に、駐車違反とみなされるリスクを抱えているのだということです。出張先で車をとめる場合は、まずこの前提を理解しておく必要があります。

駐禁切符を切られないためにやるべきこと

駐禁切符

ではこの前提に立ったうえで、駐禁切符を切られないためにできることはないのでしょうか。以下では依頼者に対してできることと、自分たちで工夫できることについて解説しておきましょう。

駐車場の有無は必ず事前に聞いておく

依頼者に対してできるのは、事前に駐車場の有無を聞いておくことです。契約駐車場などがあるようなら、訪問時に利用させてもらえるよう確認をとっておきましょう。

一方で駐車場がない場合は近隣に有料のパーキングがあるか聞いたり、依頼者の住所をもとに自分で調べたりしておきます。その際の駐車料金を買取や回収の際に加味するかどうかは事業者次第で問題ありませんが、「運賃」や「回収料金」として加算する場合は別途許可や届け出などが必要になるため、注意が必要です。

運賃として加算する場合に必要な許可・届け出については不用品回収業者が知っておくべき「運送事業」のルールとは?を、回収料金として加算する場合は不用品回収業者が「一般廃棄物収集運搬業許可」を取得するには?を参照してください。

駐車違反にならない場所も知っておこう

自分たちで工夫できることは、近隣に路上駐車をしても駐車違反にならない場所がないかを把握しておくことです。もしあるようなら、この場所を利用して買取や回収を行えます。

では駐車違反にならない場所とはどこなのでしょうか。それは以下の2つの条件を満たしたパーキングメーターです。

1.指定曜日外、指定時間外
2.駐車禁止でないエリアに設置されている

行政が設置しているパーキングメーター(時間制限駐車区間)は、60分300円ともともと格安で駐車できます。しかし上の2つの条件を満たしているパーキングメーターであれば、枠外に駐車すれば無料かつ合法的に路上駐車ができるのです。

もちろん全ての出張先の近くに都合よくパーキングメーターがあるわけではありません。しかしせっかく活用できるパーキングメーターがあるにもかかわらず、駐車違反のリスクを冒したり、有料パーキングを使うのはもったいない話です。

大阪府警警視庁のように、管轄地区のパーキングメーターの地図を公表しているところもありますし、そうでなくてもNAVITIMEなどのサービスを使えば各地のパーキングメーターの場所を調べることもできます。訪問する前に調べておいて、使えそうなパーキングメーターがあるようなら駐車場所の候補として頭に入れておくと良いのではないでしょうか。

お店などから「営業妨害だ!」と脅された場合の対処法

怒っている中年男性

出張先での駐車場所を考えるにあたっては、道路交通法のルールだけに注意していれば基本的に問題はありません。

しかしごく稀に、駐車した場所の前にあるお店などから「店の前に停められたらお客さんが入れないじゃないか!営業妨害だ!」と脅されるケースもあります。このような場合、出張回収や出張回収を行う業者はどのように対処するべきなのでしょうか。

路上駐車が営業妨害になる可能性は低い

結論から言うと、特に気にする必要はありません。なぜなら仮に路上駐車が道路交通法違反になっていたとしても、それが発展して営業妨害で罪に問われる可能性はかなり低いからです。

営業妨害には大きく3つの種類があります。第一に嘘の風説を流して営業を妨害する行為(偽計業務妨害)、第二に暴力や威圧的な態度などで営業を妨害する行為(威力業務妨害)、第三にコンピューターを通じたハッキングなどで営業を妨害する行為(電子計算機損壊等業務妨害)です。

このうち店の前への路上駐車が該当する可能性があるのは、威力業務妨害になります。威力業務妨害の争点になるのは、加害者側に悪意があるかどうかです。しかし出張回収や出張回収を行う業者がお店側に何かしてやろうと考えて駐車するはずもなく、単に依頼者宅での作業を行うために止むを得ず駐車をしているだけです。もちろん悪意などないでしょう。

また出張回収や出張買取は同じ場所に何度も行くようなケースが少ないため、継続的に同じお店の前に駐車することも滅多にありません。結果として、刑法にまつわる営業妨害の罪に問われる可能性は低いと言えるのです。

別の問題に発展しないよう対応を

しかし刑法上問題がないからといって、道路交通法上問題がないわけではありません。違法駐車をしている以上、出張回収や出張回収を行う業者側が悪いのは明白です。にもかかわらず、こちらが高圧的な態度や失礼な態度をとれば、「営業妨害だ!」と怒っている相手の気持ちも収まりません。

相手によってはこちらが車に乗るのを阻止してきたり、会社にクレームを入れるからと名刺を要求してきたりする場合もあります。最悪の場合はネットの口コミサイトなどに悪い評価を書いて投稿されてしまう可能性もあります。こうして問題が別の方向に発展してしまうと、その後のスケジュールや営業にも支障が生じかねません。

このような事態に陥らないためには次のような対応を心がけるのが無難でしょう。

・自分たちが悪いことを自覚し、しっかりと謝罪の気持ちを相手に伝える。
・名刺を要求されたら素直に渡し、本部などに事情を伝えて対応してもらう。

まとめ

違反駐車は駐禁切符を切られるリスクだけでなく、違反駐車から派生して別の問題が生じるリスクもあります。また違反駐車が原因で事故が起きてしまうケースも少なくありません。そうした状況を避けるために、あらかじめ駐車場所対策をするなどして、違反駐車を回避できるよう気をつけたいものです。