頭を抱える男性

帝国データバンクが発表した2018年の「中古販売業者の倒産動向調査」によれば、リサイクルショップなどの倒産が2017〜2018年で増加傾向にあり、17年は30件、18年は38件に上っています。とりわけ洋服や本のように、「在庫としてかさばるが重量が軽いもの」を主に取り扱う中小事業者の倒産が増えてきています。

大きな原因の一つとして挙げられているのがフリマアプリの台頭。個人間の取引がインターネット上で完結するようになり、実店舗での買取・販売量の低下につながっているのです。

中小事業者の淘汰が始まった以上、今後適切な対策を講じない事業者はどんどん厳しい状況に追い込まれていくでしょう。そうなる前に何かしらの行動を起こす必要があります。ここではこのような状況を踏まえたうえで、中小事業者に求められる3つの対策を解説します。

INDEX
  1. 個人では取り扱えない商品に絞り込む
  2. 中小事業者・実店舗ならではのサービスを提供する
    1. 実物を見られる安心感
    2. 専門知識を持った店員の接客
    3. お客様目線のきめ細やかな接客
    4. 配送や保障などの安心面のサービス
  3. 他業者との連携で「御用聞き」ポジションを確立する
  4. まとめ

個人では取り扱えない商品に絞り込む

家電

洋服や本といった「在庫としてかさばるが重量が軽いもの」とは、すなわちフリマアプリの個人間取引でも扱いやすい商品ということです。実際、2019年1月31日に株式会社メルカリが発表した利用動向調査によれば、年代別売上額上位カテゴリーランキングは以下のようになっています。

メルカリ売上高カテゴリーランキング(男性)
引用:株式会社メルカリ

メルカリ売上高カテゴリーランキング(女性)
引用:株式会社メルカリ

男女いずれにしても基本的に専門知識が必要なく、購入後のトラブル等を未然に防ぎやすい商品で売上額が高くなっていることがわかります。ここから言えるのは、こういった個人が取り扱いやすい商品を取り扱っていると、必然的にフリマアプリとの競争になるということです。

したがってフリマアプリとの競争を回避するには、個人では取り扱えないもしくは取り扱いにくい商品に絞り込んで買取・販売を行う必要があります。例えば以下のような商品です。

商品 個人では取り扱えない・取り扱いにくい理由
家具 サイズが大きいため、個人では梱包や配送などが売買のネックになる。
家電 梱包や配送などがネックになるほか、状態判断やメンテナンスにおいても個人では対応するのが難しい。
楽器 状態判断やメンテナンスで専門知識が必要になるため、個人間売買は難しい。
貴金属・宝石 相場や鑑定の専門知識がなければ取り扱うのが難しいうえ、インターネット上で個人間売買するには信用面でも難しい。
ブランド品

現時点でフリマアプリがカバーできない隙間を狙っていく。これが中小事業者がフリマアプリと住み分けを行う王道です。

中小事業者・実店舗ならではのサービスを提供する

笑顔で接客する女性

「今までずっと洋服や本を扱ってきたのに……」と思う事業者もいるでしょう。確かにこれまで時間と労力をかけて確立してきた買取・販売のルートを、そっくりそのまま捨ててしまうのにはリスクもあります。

そのような場合は、中小事業者・実店舗ならではのサービスを提供することでフリマアプリや大手事業者との差別化を図る必要があります。例えばフリマアプリと大手事業者には現状以下の3点が不足しています。

・実物を見られる安心感
・専門知識を持った店員の接客
・お客様目線のきめ細やかな接客
・配送や保証などの安心面のサービス

実物を見られる安心感

インターネットで完結するフリマアプリでは、どうしても実物を手にとって見ることができません。これはネットで買い物をしない人たちの理由の一つとしても度々挙げられています。

ではただ実店舗に商品を並べていればいいのでしょうか。もちろんそんなことはありません。「実物が置いている」と「実物が見られる」は必ずしもイコールではないからです。

例えば人気ブランドの洋服が店舗に置いてあっても、それが什器や他の商品の影に隠れていれば「実物が見られる」ことにはなりません。何を見せたいか?どう見せたいか?という意図を明確にし、それに基づいて商品の見せ方にもこだわる必要があります。

専門知識を持った店員の接客

専門家

フリマアプリはもちろん、大手事業者も近年は人工知能やIT機器を活用することで、現場で接客をする店員に専門教育をするコストを節約しています。

例えば大手リサイクルショップチェーンでは、各店舗に高精度のウェブカメラを設置し、本部に常駐している専門スタッフがブランド品などの真贋査定や価格査定を行うようになっています。

一方で中小事業者は人の目と手で査定を行い、商品のメンテナンスをするにしても現場の人間が実際に手を動かして行なっているケースが多いはずです。「資金がないからそうせざるを得ない」というのが実情かもしれませんが、これは裏返せば現場の人間がしっかりと専門知識を持っているということです。

そのため洋服を取り扱うにせよ、ブランド品を取り扱うにせよ、家具や家電などを取り扱うにせよ、専門知識に基づいた接客が可能になります。これはコスト削減のために設備投資を行う大手事業者や、そもそも店員がいないフリマアプリには真似のできないサービスです。

しかしこれは「専門知識がないまま接客をしていたら勝てない」ということでもあります。したがって中小事業者は、専門知識や接客技術についての教育に対して、大手以上の時間と労力をかける必要があるのです。

お客様目線のきめ細やかな接客

リサイクルショップのお客様の中には、はじめての一人暮らしをするのに「まずは中古の安い家電・家具から」という感覚で来店する人もいます。そうしたお客様は家電や家具を自分で選んだことがなかったり、どんな基準で選べばいいかわからなかったりと、お店の前で頭を悩ませる場合が少なくありません。

大手の場合、こうしたお客様がいても他のお客様に接客しなければならなかったり、その他の業務で時間が割けなかったりと、きめ細やかな対応ができません。これに対して小回りの利く中小事業者であれば、親身になってお客様の話を聞き、ニーズに応じた提案などをすることができます。

「こちらの電子レンジは最新の機能がついていますが、よほど料理をしない限りは使わない機能でもあります。もしそこまでこだわりがないようでしたら、値段の安いあちらの電子レンジの方がおすすめですよ」

「ご予算内に収めるのであれば、特にこだわりのない冷蔵庫はこちらの安いものにしておいて、こだわりのある洗濯機を少しグレードの高いものにするというのはどうでしょうか?」

こうしたきめ細やかな接客の積み重ねが信頼関係につながり、その信頼関係がネットやリアルでの口コミにつながるのです。

配送や保障などの安心面のサービス

荷物を運ぶトラック

フリマアプリはアプリ上でのやりとりが無事終わっても、配送面での不安がどうしても残ります。相手は個人ですから、梱包などの問題で商品が破損してしまう可能性が比較的高いためです。また仮に破損があった場合でも、個人間であれば基本的に保障はありません。

ここに中小事業者が入り込む隙間があります。ただし、確実な配送や万が一の保障サービスを用意しておくだけでは不十分です。SNSやチラシ、店頭POPなどを通じて、お客様から「安心して任せられる」と思ってもらえるようアピールするようにしましょう。

他業者との連携で「御用聞き」ポジションを確立する

笑顔の男性

フリマアプリや大手事業者は、新聞で言えば全国紙です。これに対して中小事業者は小回りが利く地方紙と言うことができます。

そのため中小事業者はフリマアプリや大手事業者が目指すより多くの人のニーズを満たすサービスを提供しようとするのではなく、一部の地域の人のニーズを確実に満たすサービスを目指す方が効率的です。

中古洗濯機を購入したお客様が水回りのトラブルで困っていたら、腕が確かで料金も安い水道修理業者を紹介する。中古パソコンを購入したお客様が操作やウイルス対策で困っていたら、すぐに調べて回答したり、詳しい人を紹介したりする。

電化製品の故障・不具合で困っているお客様には、自社で対応したり、場合によってこれも腕が確かで低コストの業者を紹介したりする。引越しが必要になった場合は、格安で請け負ってくれる事業者を斡旋するなど、単なるリサイクルショップの枠を超えて御用聞きポジションを確立するのです。

実際、近年の高齢者の増加や個人商店の減少により、こうした御用聞きがビジネスモデルとしても注目されつつあります。地方はもちろん、都市部でも高齢者の増加・個人商店の減少は大きな流れですから、今後も御用聞きのニーズは高まっていくはず。

先を見越して、今から御用聞きとしてのリサイクルショップを目指しておくのも、一つの有力な戦略と言えるのではないでしょうか。

まとめ

フリマアプリや大手事業者の得意分野で戦っても、中小事業者に勝ち目はありません。しかしフリマアプリや大手事業者ではできないようなサービスを提供できれば、それを求めているお客様を獲得することができます。

ただし、ライバルは中小事業者の中にもたくさんいます。中小事業者にしかできないサービスは何かを考えたら、次はそれを踏まえたうえで自社にしかできないサービスは何かを絞り込んでいきましょう。そうして差別化に成功できれば、今後も生き残っていくことができるはずです。