古物営業法第4条には、古物営業許可が取得できない業者の条件が定められています。古物営業許可を取得しようとする際には、あらかじめこれら条件に当てはまらないかを確認しておく必要があります。以下ではこの条件全てについて一つずつ解説していきます。

INDEX
  1. 自分で適切な判断ができない方は許可が取れない
  2. 破産者で復権していない方は許可が取れない
  3. 刑務所に収監された方は5年間許可が取れない
  4. 住居が分からない方は許可が取れない
  5. 罪を犯した元古物商は5年間許可が取れない
  6. 許可証を返納したら5年間は許可が取れない
  7. 未成年者は許可が取れない
  8. 管理者が適切でないと許可が取れない
  9. 法人の役員に「上記の1から6」の方が入ってると許可が取れない
  10. 2018年10月24日以降に追加される3つの条件
  11. おわりに

自分で適切な判断ができない方は許可が取れない

判断能力が不十分な方サポートが必要な方のことを指します。成年被後見人や被保佐人の方はサポートが必要です。そのサポートが必要な方は、許可を取ることができません。具体例を出しますと、認知症を患っている方、精神上の障害により判断能力が不十分な方等を指します。

古物商は大切な商品の取り引きをしたり、大金を扱ったりするケースも少なくありません。そのため判断能力が不十分で、自分で適切な判断ができない方は許可を取得できないようになっているのです。

破産者で復権していない方は許可が取れない

破産手続きを開始すると、破産者は様々な法的な制限を受けることになります。破産手続きをしている方に対しては、大切な商品やお金を扱うための資格である古物商の許可を与えてはならないとの考えから、破産者で復権を得ていない方は、許可を取ることができません。

刑務所に収監された方は5年間許可が取れない

刑務所に収監された人は5年間許可取得が出来ない

刑務所には様々な方が収監されています。交通事故を起こした方、人を殴った方、詐欺を働いた方、様々な罪を犯した方が収監されています。刑務所に入っている方も2通りあり、懲役刑で服している方、禁錮刑で服している方がいます。このどちらの場合でも、古物営業の許可を取るには、刑務所から出てきてから5年間経過しないと許可を取ることができません。

執行猶予の場合はどうなるのか?

懲役および禁錮の刑罰を受けた場合とは別に、執行猶予が与えられただけという場合はどうなるのでしょうか。例えば「被告人を懲役2年執行猶予4年に処する」という判決が出たとしましょう。この判決の意味するところは、被告人の罪をつぐなうには2年間刑務所に入る必要があるが、4年間罪を犯さなければその罰を免除するというものです。

この場合、執行猶予の4年間は古物営業許可を取得することができませんが、執行猶予期間が終わればその時点から許可が取得できるようになります。

特殊な犯罪の場合は罰金刑でも許可を取ることができない

古物営業法では、特殊な犯罪の罰金刑を受けた方も5年間古物営業許可を与えない制度になっています。
その特殊な犯罪とは、すなわち古物商に関係する犯罪を指します。具体的には古物営業法の無許可営業、古物営業法の名義貸し、刑法247条の背任罪、刑法254条の遺失物等横領、刑法256条の盗品譲受け等です。

住居が分からない方は許可が取れない

古物営業許可の取得に際しては、住民票がある場所にしっかりと住んでいるかどうかも問題になります。引っ越しをした後に必ずしないといけないのが住民票の移動です。しかし面倒でこれを怠っている方も少なくありません。そのような事実が発覚した場合は、古物商許可が取得できないため、古物商の許可の申請の前にしっかりと住民票の移動等の手続きをしておきましょう。

罪を犯した元古物商は5年間許可が取れない

古物営業法の許可は、罪を犯すと取り消されることもあります。例えば、盗品を販売した場合や買取の際本人確認などをしなかった場合、営業の停止や営業許可の取り消しが行われます。

この古物営業許可の取り消し処分を受けた方は、5年間古物営業の許可を取ることができません。これは個人でも法人でも同様で、法人営業の場合は、その法人の役員をやっていた方も5年間許可の取得ができなくなります。この場合の「役員」には許可を取り消された当日に役員だった方はもちろん、処分前に聴聞の日が公示された日の60日前まで役員だった方も含まれます。

なぜ「聴聞の日が公示された日の60日前まで」という条件が設けられているのかというと、取消処分当日に役員でなかったからといって古物営業許可の取得を認めてしまうと、「営業許可の取り消し処分がなされそうだ!」となった時に役員を辞め、新しい会社を立ち上げて、また罪を犯す可能性があるからです。

許可証を返納したら5年間は許可が取れない

許可証

古物営業許可の取消処分は、違反確認→聴聞→処分の順番で行われます。それぞれのステップは1日で行われるのではなく、一定日数の期間があります。そのため処分を逃れるために、聴聞から処分の間に古物営業許可証を返納することも可能です。聴聞によって処分の日程が公示がされてから実際に処分が下される日までに許可証を返納した場合、処分は行われません。すでに許可証を返納している業者に対して許可証の返納を求めることはできないからです。

しかし処分が行われなかったからといって、再度古物営業許可を取得できるようにすると、処分逃れのために許可証を返納できることになってしまいます。このような事態を防ぐため、処分を受ける前に許可証を返納しても、返納した日から5年間は許可が取れない制度になっているのです。

許可証の返納をしても、新たに許可の申請できる場合もある

例えばリサイクルショップを営業していたが経営不振で廃業した場合は、遅滞なく許可証を返納しなくてはなりません。しかしこのような場合であれば、例えば再度リサイクルショップを開こうと思い、古物営業許可を取得しようとすれば、それがたとえ返納が2年後であったとしても許可の申請を行うことは可能です。

つまり、処分逃れが目的で許可証を返納した場合は、返納の日から5年間許可が申請できませんが、経営不振など相当の理由があって、返納された方は5年間待たなくても新しく許可を申請できるというわけです。

未成年者は許可が取れない

未成年者は、取引をするための一般的な能力がないと考えられているので、基本的には許可の申請ができません。しかし、例外的に古物商や古物市場主の相続人が未成年の場合には、その法定代理人がここまで見てきた条件に当てはまらない限りは許可を取得できるとされています。

リサイクルショップを経営する親と未成年である娘

祖母、リサイクルショップを経営する父親、そして未成年者の一人息子の3世代3人暮らしの家族がいたとしましょう。このうち父親が亡くなった場合、息子は未成年であるため祖母が息子の法定代理人となります。息子は未成年なので、古物営業許可を取得することもできません。このままでは父親のリサイクルショップは廃業せざるを得ません。

しかし息子の法定代理人である祖母が、先ほどまでにここまで見てきた条件に当てはまらないのであれば、例外的に息子の古物営業許可の取得が認められるのです。つまるところ、未成年者には基本的に許可がでないものの、未成年者が事業を相続したような場合には許可が下りる場合があるということです。

管理者が適切でないと許可が取れない

許可の申請をする時には営業所や市場ごとに業務をしっかりと実施するための管理者を置かなければなりません。その管理者が上記で書いてきた許可を取れない人の場合は許可が取れません。

例えば5年以内に古物営業許可の取消処分を受けたために、新たに古物営業許可を取得できない男性Aがいたとします。この男性Aを管理者においているような店舗などに許可を出してしまうと、再び許可の取消が必要な事態になりかねません。そのため管理者にも適切な人材を配置することが求められているのです。

法人の役員に「上記の1から6」の方が入ってると許可が取れない

時間を気にかける男性

1.自分で適切な判断ができない方は許可が取れない
2.破産者で復権していない方は許可が取れない
3.刑務所に収監された方は5年間許可が取れない
4.住居が分からない方は許可が取れない
5.罪を犯した元古物商は5年間許可が取れない
6.許可証を返納したら許可が取れない
1から6まで許可が取れない方を書いてきました。

この6点のいずれかに該当する方が一人でも役員にいる法人は許可を取ることができません。あるいは個人営業をしていたが、許可を取り消されてしまった方が法人営業に変更されても許可を取ることはできません。

また、法人役員に破産者で復権を得てない人や成年被後見人等などが入っている法人に許可を与えると消費者に被害が出る可能性があります。
そのため、1から6の方が役員にいる法人には許可がおりない制度になっています。

2018年10月24日以降に追加される3つの条件

2018年4月25日に交付され、同年10月24日に施行される改正古物営業法では、ここで解説した条件に以下の3つの条件が追加されました。

追加条件 詳細(引用:警察庁
窃盗罪で罰金刑を受けた者 刑法(明治40年法律第45号)第235条(窃盗)に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなった日から起算して5年を経過しない者
暴力団員 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの
暴力団員に類する者 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者

おわりに

古物を取り扱うような仕事は、ともすると偽物の流通につながる恐れもあります。国が古物商の営業に許可制度を設けているのはそのためです。この重要な許可をここで挙げた条件に該当するような業者に与えてしまえば、消費者に被害が出るだけでなく、同業他社や社会全体にも迷惑をかける可能性さえあります。あらかじめ許可が取得できない業者を定めているのは、このような事態を防ぐためなのです。

古物営業許可の取得を検討する際は、自分がここに挙げた条件に該当しないかをまず確認するようにしましょう。