鉄スクラップ市場は足踏み状態
2017年現在、夏の間にスクラップの輸出契約が高値で終わったので、お盆以降は電炉メーカーの生産量増加をキッカケに値上げ傾向の国内取引価格でした。
西日本は値上げが遅れていましたが、東日本との価格差は解消されました。
しかし、アメリカ産のトルコ向けスクラップの成約価格が40ドルから50ドルの規模で急落し、海外市場は急激に下がっていて、日本と海外の差が激しい状態です。
非鉄スクラップ市場は停滞気味
非鉄スクラップの市場は、アメリカのハリケーン被害、北朝鮮の核実験やミサイル発射などで為替相場が下落しました。
通常は、ドル安だと銅の相場は上がりますが、原油の値下げや銅の在庫が世界で10,000トン以上増加したことなどが影響して銅の相場が大きく下がりました。
後に、円安で銅市場の下落が止まりかけていたものの、中国の経済指標が悪化して先行きが見えなくなったことから、下落はもう少し続くと考えられています。
銅は国内流通で特一号銅線(ピカ線)以外のものは高値ではなくなっているのが現状です。
アルミニウムや銅を取り巻く市場環境は複雑
アルミニウムや銅はとりわけ様々な用途で使われている金属なので、買い取り市場は複雑です。
特に、銅は円相場の為替や投機マネーを例とする外部からの影響を受けるため、銅建値を予測しづらくなっています。
アルミニウムは需要が銅以上に高まる予測
近年では、銅との価格差拡大を受けた素材代替の勢いもあり、需要は銅を上回るペースで増えています。
アルミニウムは生産過程で大量の電力を消費するため、生産コストが高くなりますが、リサイクルをする場合は、生産時のたった3%のみの電力しか消費せずに新地金と品質は大差がありません。
例えば、アルミニウム印刷版の相場は大体1キログラムあたり170円前後です(2017年10月現在)。
原料から生産するよりもリサイクルコストが低く済むので、どの雑品シッパーも買取価格を上げてまでして買い取りたいのです。
銅の価値は経済・世界情勢に注意する
アメリカ大統領選挙が始まってからドナルド・トランプ氏に決まるまでの間、対ドル円相場が110円前後、平均銅建値は550円/キログラムと大きな幅がありました。
また、2008年の秋に起きたリーマンショックの時には、銅建値が大きく下がっていったので、世界の出来事によって買取価格の市場は変動していると考えても良いでしょう。
銅は、電気抵抗率が低く、熱伝導率が高い金属なので、電気の導体として利用されている上、他の金属と混ぜて強度を増やすことも出来ます。
銅の持つこれらの特性が有益であるがゆえに、価値の高い金属として知られています。
特一号銅線の相場は大体1キログラムあたり760円前後(2017年10月現在)。今のところ750円から800円の間で買い取っているリサイクル業者が大半のようです。
雑品の買取価格相場
雑品には種類によって、買取価格の相場が変わってきますよね。
ここでは2017年10月現在の買取価格相場を4点ご紹介いたします。
給湯器:約120円から140円/キログラム
給湯器の釜は高価買取対象の銅でできているため、高値で買い取っています。
銅以外の材質でできている際は、給湯器ではなくボイラーであったり家庭用品として100円ほど安くして買い取っているところもあるようです。
エアコンラジエター:約60円から350円/キログラム
ラジエターは材質によって価格が違い、アルミニウム製であればやや高値、銅製であれば高値で、プラスチックがついているものは安くなってしまいます。
アルミニウム製であっても、銅が多く含有されているものはアルミニウム製の相場より少し高くなります。
キュービクル:約30円/キログラム
内部にトランス(アルミニウム製や銅製が多い)や電線が入っていれば価値はありますが、それらが無い場合は鉄屑の扱いとして買い取られることがあります。
また、油が入っているものは、その重さを考慮して値引きをしているリサイクル業者が多いようです。油を抜いているものは通常より高くなるとされています。
自動車のタイヤ:約490円から800円/キログラム
ホイールがアルミニウム製のものに限定されます。アルミニウム以外の材質だと価格は非常に下がり、0円で引き取るケースが主流のようです。
14センチメートル未満のタイヤ(軽自動車など)だと490円前後で、14センチメートル以上のタイヤ(普通自動車など)は最高800円で買い取られています。
モーター:約28円から100円/キログラム
自動車・工業用機械などに用いられているモーターは、鉄・銅が多く使われているので価値がある雑品です。モーターにはコンプレッサーやダイナモという種類があるので、それぞれによって価格は変わります。
モーター丸ごとよりも、モーターコアだけの方が20円ほど高く買い取られているリサイクル業者さんを確認できました。
雑品市場は資源価格が低く安定していたから急成長した
雑品の市場が急成長した理由は、1990年代後半から2000年代前半にかけて資源価格が低い状態で安定していたためというのが挙げられます。
さらに、中国で解体を行えば人件費が非常に安くあがり、利益が出たのです。
中国の経済成長に伴う資源の大量消費でスクラップの需要は著しく上昇し、2005年から2008年までの間、全ての資源価格は上がり続けたので「資源バブル」の状態でした。
日本全体でスクラップ業界は苦境に立たされている
2017年現在、ここ1、2年前から中国の生産過剰であったり、スクラップ価格の暴落という原因から、雑品スクラップは需要がありません。実際に、金属スクラップ業界は破産・廃業・撤退を余儀なくされています。
雑品スクラップは、中国でスクラップの需要が高まりはじめた2000年代から出てきたもので、初めは、仕入れの単価が1キログラムあたり5円から10円と安く、儲かりやすいものでした。
しかし、2008年のリーマンショックを契機に非鉄金属相場が下落し、在庫の評価損が膨大になった結果として輸出業界は圧迫し、その後に発生した経済不況で市場は小さくなりました。
外資系業者の進出で更に苦しい状況に
雑品スクラップの最大輸出国・中国が、中国国内の環境規制強化したことと、中国政府の廃棄物輸入禁止の可能性を帯びてきました。
これにより、さらに日本の雑品シッパーは苦しい立場になるとされています。
また、経済不況で小さくなった国内のスクラップ市場に追い打ちをかけるが如く、外資系の業者が日本に進出した影響で採算が悪化しました。
打開策として大手の雑品シッパーは地方の業者と手を組んで、物資量を賄うことができましたが、その地方業者も独自で雑品を手がけるようになりました。
資金力のある外資系スクラップ業者と地方業者と戦えなくなった大手のシッパーは撤退せざるを得ない状況に陥っています。
新たなビジネスを構築する必要がある
小さくなり続けるリサイクル業界の中で求められるこれからのビジネスは、今までの事業の模倣でも延長でもない完全に新しいものです。
ただひたすら事業を拡大すれば良い時代ではなく、革新的なビジネス構築を準備しておきましょう。
まずは、経済環境や世界情勢を逐一確認し、各スクラップの相場を理解した上で適切な雑品の買取価格を設定することが大切です。そこから発展した新ビジネスの構築で窮地に備えておきましょう。