スクラップ

工場やオフィス、家庭など、様々な場所から排出され、寄せ屋やスクラップ業者に集められるスクラップはその後、どのようなルートをたどるのでしょうか。

今回は、意外と知られていないスクラップの取扱品目から加工、流通先までのルートについて詳しく解説します。

INDEX
  1. 寄せ屋(スクラップ業者)が扱うのは「市中スクラップ」
  2. 市中スクラップの詳細な分類
    1. 鉄スクラップ
    2. 鉄スクラップの主な加工方法
  3. 鉄スクラップは海外にも輸出される
    1. 鉄スクラップの輸出先
  4. 鉄スクラップは国内メーカーに販売された後はどうなる?
  5. スクラップは欠かすことのできない資源

寄せ屋(スクラップ業者)が扱うのは「市中スクラップ」

まずは、スクラップの種類についてご説明します。

鉄鋼メーカーにおいて、製品の製造過程で発生する鉄スクラップを「自家発生スクラップ」と呼ぶのに対し、寄せ屋(スクラップ業者)が扱うスクラップは、市中に出回っているスクラップのため「市中スクラップ」と呼ばれています。この市中スクラップは、さらに2つに分けることができ、ひとつは機械や車といった製造工場から発生する「工場発生スクラップ」、もうひとつは廃車や解体した建物、家庭の不用品などから排出される「老廃スクラップ」といいます。

市中スクラップの詳細な分類

鉄鋼メーカーで発生するスクラップは主に鉄ですが、寄せ屋(スクラップ業者)が扱う市中スクラップには鉄スクラップの他、銅線やアルミ缶といった非鉄金属スクラップ、金属が含まれる基盤や家電製品などの雑品スクラップなどがあり、そこに含まれる品目は多岐にわたります。

一例ではありますが、具体的には次のようなものがあげられます。

鉄スクラップ

鉄スクラップ

鉄スクラップは寄せ屋(スクラップ業者)などに回収された後加工され、再び製鉄原料としてリサイクルされます。鉄スクラップには(一社)日本鉄源協会によりグレードが定められており、その中には国内でも最も流通量が多く、解体した建築物から排出される鉄筋などの「H2」、自動車や機械を製造する際に出る端材などの「新断」といったものがあります。

ギロチン材
H鋼やレール、鉄筋、軽量鉄骨、足場材、ドラム缶、ボルトなど、使用するには切断する必要がある鉄スクラップ

級外
トタン、シャッター、フェンス、一斗缶など

新断
自動車や機械など、金属加工の際に型を抜いて残った部分で、サビのないもの

ダライ粉
鉄製品の製造や加工で発生する削りくずや切り粉

ガス切り材
厚みがあり、通常の切断機では切断が難しく、ガス溶断が必要なもの

非鉄金属スクラップ
鉄スクラップと同様、アルミやステンレスなどの非鉄金属も回収後に加工され、非鉄金属原料として再利用されます。


熱や電気を伝えやすい性質があることから、機械や家電の電線や配管などにも多く使われている

ステンレス
クロムやニッケルを含ませた合金鋼で、SUS304と呼ばれる種類のものが代表的

真鍮
銅と亜鉛の合金で、水道の蛇口やバルブ、ナットなどに使われていることが多い

アルミ
アルミ缶をはじめ、サッシやホイール、フライパンなどのアルミ製品など

砲金
銅とすずの合金で、バルブや水道メーターの容器に使われていることが多い

雑品スクラップ
工場などで使用していた機械や、空調機、配電盤、給湯器、ガスメーター、自動車用のバッテリーなど、その名のとおり様々なものがあります。

鉄スクラップの主な加工方法

寄せ屋(スクラップ業者)に集められた様々な種類のスクラップは、その後国内外のメーカーに販売されることになります。そのためにはスクラップを加工し、素材ごとに分類する必要があり、スクラップの代表的な加工方法については次のものがあります。

プレス(圧縮)加工
空き缶やトタン、アルミサッシなど、薄いながら空間が多くあるスクラップは、型に入れて圧縮し、箱型にまとめます。

シャーリング(切断)加工
建築廃材やパイプなど、長さと厚みのある素材は、一定の長さに切断します。一般的にはプレスシャーリングと呼ばれる圧縮切断機により加工しますが、一旦プレスをしてまとめた上で切断をすることもあります。

シュレッダー(破砕)加工
家電製品や自動車といった、プラスチックやゴムなど金属以外のものも多く含まれる雑品スクラップには、ハンマーの付いたシュレッダー装置で細かく砕いて、分類します。鉄・非鉄金属はリサイクルされ、非金属は処分されます。

手作業での分類
雑品スクラップなどの場合、磁石などを利用しながら手作業で分類することもあります。

鉄スクラップは海外にも輸出される

輸出船

寄せ屋(スクラップ業者)に集められる「市中スクラップ」は、国内だけでも年間3,000トン以上が回収されていると言われています。この市中スクラップの量は国内での消費量を超えており、一時はこの余剰による鉄スクラップ価格が大幅に下落する事態に陥りました。そこで、余剰をなくし鉄スクラップの価格の下落を防ぐため、鉄スクラップは国内のメーカーへ販売されるにとどまらず、寄せ屋(スクラップ業者)から直接、あるいは総合商社や専業者を通じて海外へと輸出されるようになりました。

その結果、現在の日本からの鉄スクラップ輸出量は世界的に見てもトップクラスを誇っています。

鉄スクラップの輸出先

2016年度の鉄スクラップの輸出量は863万4720トンで、3年連続で増加傾向にあり、上位3位は次のようになっています。

順位 輸出国 輸出量
1 韓国 363万3979トン
2 中国 203万1342トン
3 ベトナム 183万2322トン

参照元:WEB産業新聞

この他、輸出先には台湾、インド、バングラデシュ、インドネシアなどもあります。もし、輸出国上位にある韓国や中国などが自国で鉄スクラップをまかなえるようになれば、日本としてはアジアの近隣諸国だけでなく、更なる地域への輸出についても視野に入れなければいけません。

そのため、鉄スクラップのマーケットは今後大きく変化することが予想され、輸送方法や品質確保など、変化に対応すべき課題も多く残されています。

鉄スクラップは国内メーカーに販売された後はどうなる?

寄せ屋(スクラップ業者)で鉄鋼メーカーの規格に加工されたスクラップは、まず製鉄原料としてスクラップヤードに受け入れられ、他の原料との配合が行われます。次に、アーク炉と呼ばれる電気炉で溶かされ、精錬されて鋼になります。

精錬作業は成分調整をするために徹底的に行われ、精錬された溶鋼は、鋳型に入れられ、水により冷却され固まります。一旦冷却された鉄は、形状を整えるために再び過熱され、圧力を加えるなどして必要な形に成型され、検査や切断などののち再び市場へと出荷されるのです。

市中スクラップは、基本的に様々な鉄鋼製品の鉄スクラップが混合されたものなので、高品質の鉄鋼製品に使用されるのではなく、鉄筋や鉄骨などの建材へ使用されることが主流となっています。

また、自家発生スクラップと呼ばれる鉄鋼メーカーの製造過程で発生する鉄スクラップは、鉄鋼メーカーで自家消費されるため、私たちが日頃目にしている鉄筋や鉄鋼は、実はこのリサイクルされた鉄スクラップからできていることがほとんどなのです。

スクラップは欠かすことのできない資源

工場や家庭など、様々な場所から排出され、寄せ屋(スクラップ業者)に集められるスクラップ。一見「いらなくなったもの」といったイメージもありますが、実は国内外において欠かすことのできない非常に重要な資源であり、その資源を新たな形に蘇えらせるために、寄せ屋(スクラップ業者)もまた、非常に重要な役割を担っているのです。