不用品回収業者の仕事はインターネットや電話から依頼を受けて、回収に行くだけではありません。また次回利用してもらうため、口コミで依頼者を獲得するため、違法な不用品回収業者と間違われないため、回収先の依頼者とのコミュニケーションも重要な仕事です。逆に言えば依頼者への対応次第では「この業者に依頼して大丈夫だったか?」と不安を抱かれる可能性も十分あります。

そうならないためにここでは、依頼者からのよくある質問へのOK対応とNG対応をご紹介。それぞれの質問での回答のポイントも解説します。法律に従った、安心できる業者だと思われるための対応を身につけましょう。

INDEX
  1. 古物商許可範囲で回収をおこなう場合の回答集
    1. 回収したものってどうするんですか?
    2. 再販するのに、お金取るの?
    3. 安くてもいいから買い取ってくれませんか?
    4. メル○リで売ってる金額で買い取ってくれない?
    5. 買取はしていないんですか?
    6. 市の粗大ゴミ回収料金より高い
    7. 「ふようひん」ってゴミでしょ?回収していいの?
    8. これ壊れてるし、売れないでしょ?
    9. 布団やじゅうたんも再販できるんですか?
    10. (ゴミ屋敷の)ゴミ、回収してどうするの?
  2. 質問対応のまとめ

古物商許可範囲で回収をおこなう場合の回答集

以下では全10個の依頼者からのよくある質問を挙げ、それぞれに模範的なOK対応NG対応を挙げ、そしてそれらのポイントを解説していきます。単に対応の良し悪しを知っておくだけでなく、その理由も理解することでより臨機応変な対応ができるようになるはずです。ぜひ参考にしてください。

今回の対応集は一般廃棄物収集運搬業許可を未取得で、古物商許可での営業を行う不用品回収業者に向けまとめたものです。一般廃棄物収集運搬業許可を取得済みの場合は、NG対応ではない例がございます。あらかじめご了承ください。

回収したものってどうするんですか?

<OK対応>
リサイクルショップなどに持ち込んで、中古品として販売します。ただこのままでは買ってもらえないので、掃除をしてきれいにしたり、故障がないか調べたり、故障がある場合は修理をしたりして、売れるように手を入れます。

<NG対応>
こちらで処分します。(「捨てます」「廃棄します」も同様)

ここでのポイントは「あくまで古物営業許可の範囲内で品物を取り扱う」という旨を伝えることです。古物営業許可の範囲内とはすなわちリユース品・リサイクル品といった「有価物」の範囲内です。一方でNG対応の「処分します」「捨てます」「廃棄します」は一般廃棄物収集運搬業許可の範囲に入ってしまいます。このセリフは回収する品物を「廃棄物」として扱っていると宣言しているようなもの。これでは無許可営業になってしまいます。したがってOK対応のような対応が正解です。
※一般廃棄物収集運搬業許可を取得済みの業者は無許可営業とはなりません。

再販するのに、お金取るの?

<OK対応>
ご自宅までの出張費や、スタッフの人件費、搬出代金などの経費として料金をいただいています。

<NG対応>
ゴミ処理代金だと思ってください。売れなかった場合にはこちらで処分が必要になるんです。

ここでのポイントは「料金の内訳を事前に提示すること」「あくまで廃棄物の処分料金ではない旨を伝えること」の2点です。依頼者の自宅に訪問して品物を買い取る行為は、特定商取引法上で「訪問購入」と呼ばれています。この訪問購入においては、事業者は品物の種類や買取価格などを記載した書面を渡す義務を負っています。これを家から運び出してトラックに積み込む直前や、積み込んでしまった直後に提示してしまうと、不当行為として違法になる可能性があるのです。したがって「何にいくらかかるか」について事前に依頼者と合意しておく必要があります。

また「ゴミ処理代金だと思ってください」という言い方は、たとえ実際はそうでないとしても、依頼者に対して「ゴミとして引き取ってもらった」と思わせてしまうためNGです。前述したように古物営業許可しか取得していない不用品回収業者がゴミ=廃棄物を回収するのは違法行為です。依頼者に余計な不安を抱かせないためにも、こうした言い方は避けましょう。

安くてもいいから買い取ってくれませんか?

<OK対応>
ご自宅までの出張費や、スタッフの人件費、搬出代金のほか、在庫保管用の倉庫のレンタル料などがかかってしまうので、どうしてもこの料金になってしまいます。申し訳ありません。
※リサイクルショップと同名で営業している場合は、これらに加えて「清掃・検品・修理のための人件費」「店舗の家賃」も提示できます。

<NG対応>
売れるかどうかは現時点ではわからないので、できません。

ここでもポイントになるのは「料金の内訳をきっちりと伝え、納得してもらうこと」です。依頼者がこうした質問をするのは、得てして「どこにいくらかかっているのか」という情報を持っていないからです。したがってきちんと「こういうところにお金がかかっている」という情報を提示すれば、「それなら仕方ない」と納得してくれます。

NG対応のように「なぜこの料金なのか」の説明をあやふやにしてしまうと、「じゃあ売れなかったらどうするの?」とどんどん疑問や不安を抱いてしまいます。提示するべき情報はあやふやにせずきちんと伝える。これが依頼者に気持ちよく取引を終えてもらうための重要なポイントのひとつです。

メル○リで売ってる金額で買い取ってくれない?

<OK対応>
申し訳ありません、できかねます。私共で回収させていただく場合は各種経費のほか、在庫リスクや故障などのトラブルなどの取引リスクも全てこちらで引き受けることになります。フリマアプリではこうしたものを全てお客様自身で背負われるわけなので、販売価格自体は私共の査定金額より高値になる傾向にあります。ご了承いただければ幸いです。

<NG対応>
フリマアプリは素人の方が値段を決めているので高値になる傾向があります。私共はその金額では買取できません。

ここでのポイントは前述の「料金の内訳」に加えて「他サービスと自社サービスの違い」を伝え、納得してもらうことです。フリマアプリのような個人間取引では、個人対不用品回収業者の取引にあるコストやリスクを個人が背負うという性質があります。不用品回収業者はそれらを個人の代わりに背負うわけなので、それが査定金額に反映されているのです。その点をきちんと伝えれば、依頼者も理解してくれます。

きちんと説明するのが面倒だからと、NG対応のようにあしらってしまうと依頼者も納得できず、疑問や不安も解消されません。

買取はしていないんですか?

<OK対応>
全ての品物を買い取らせていただきます。ただし、品物の買取代金以外に出張費などの経費をこれだけいただいておりますので、差し引くとお客様から回収料金としてお代金をいただくという形になっております。

<NG対応>
はい、していません。

古物営業許可しか持っていない不用品回収業者は、「買取」しかできません。したがってここでのポイントは「基本的には買取だが、経費などとの関係でお金を支払ってもらわないといけない」という旨を具体的に提示することです。つまりOK対応の「出張費などの経費をこれだけいただいておりますので」の「これだけ」をはっきりと数字を見せて伝えるべきなのです。

ここで数字を見せないまま「経費がかかるので」だけで押し切ろうとすると、「いったいいくらかかってるんだ?」という疑問を解消できません。この疑問は「騙されるんじゃないか?」という不安につながる可能性があります。だからこそ例えば「査定金額は3,000円ですが、ご自宅までの出張費で1,000円、スタッフの人件費で2,000円、搬出代金に1,000円いただいておりますので、1,000円のお代金をいただいております」と具体的に伝える必要があるのです。

NG対応はこうした説明の手間を惜しんでいるか、あるいは「自分たちが買取しかできない」と理解できていない場合の対応です。しかし「買取をしてない」=「廃棄物の収集運搬をしている」です。こうなると違法行為になってしまいます。あらかじめ従業員への周知徹底をこころがけましょう。

市の粗大ゴミ回収料金より高い

<OK対応>
品物の材質にもよりますが、家具のほとんどは「粗大ゴミ」として行政に処分を依頼する方が安く済みます。ただ指定日に指定の位置まで自分で運ばなければならないので、手間も時間もかかります。また冷蔵庫や洗濯機などのリサイクル家電に関しては、行政では引き取ってもらえないんですよ。私共に依頼していただくとお金はかかってしまうんですが、そうした面倒なことを考えずに粗大ゴミを引き取らせていただけます。

<NG対応>
そうでしたか?私共も頑張っているので、ご了承ください。

ここでのポイントはフリマアプリのときと同じ「他サービスと自社サービスの違い」をきっちり伝えて納得してもらうことです。そのためには行政のサービスに何ができて、何ができないのかを従業員がしっかりと理解し説明できるようにしておく必要があります。それさえできれば、むしろこの種の質問はどういうところがメリットなのかをアピールするチャンスになります。

NG対応のように適当にごまかして逆に不信感を煽ったり、不満を膨らませるような対応をしてしまうと「この業者はぼったくりだ」などとあらぬ誤解を招いてしまうかもしれません。きちんと事実を伝えましょう。

「ふようひん」ってゴミでしょ?回収していいの?

<OK対応>
「用」の方の不用品は確かにゴミという意味合いがありますが、「要」の方の不要品は「要らないけどまだ使える」という意味があります。今回引き取らせていただく品物には使えないものや壊れたものもありますが、パーツが使用できたり、修理して再販できたりするのでゴミではありません。なので私共でも回収が可能です。

<NG対応>
大丈夫です!ゴミでもなんでも回収します!

ここでのポイントは最初の質問と同じ「あくまで古物営業許可の範囲内で品物を取り扱う」という旨を伝えることです。つまり品物をゴミとして回収することはできないが、引き取る品物はゴミ=不用品ではなく、まだ価値のある不要品なのだということを依頼者に理解してもらうのです。

NG対応の方が一見すると端的でわかりやすいように思えますが、これでは「はい、私共は違法業者です」と宣言しているのと同じです。必ずOK対応のような回答をしましょう。

これ壊れてるし、売れないでしょ?

<OK対応>
確かに壊れてはいますが、海外に輸出すると価値がついたり、分解して部品を取り出すと売り物になる場合もあります。なので回収は可能です。

<NG対応>
そうですね。でもこちらで処分するのでご安心ください。

ここでのポイントは「自社がどうやって採算を確保しているか」をはっきり伝えることです。その一例として便利なのが「海外への輸出」です。実際日本の中古家電は香港やフィリピンをはじめとする東南アジアに大量に輸出されています。こうした質問をする依頼者は「なぜこんなものまで買い取れるのか?」という疑問を抱いている可能性が高いため、「こうやって収益化しています」という情報を伝えると納得してくれます。

間違ってもNG対応のように「処分」というワードを使って、違法業者だと誤解されないようにしましょう。

布団やじゅうたんも再販できるんですか?

<OK対応>
はい、再販できます。日本では嫌がる方が多くてなかなか需要がありませんが、海外では需要があるので大丈夫です。

<NG対応>
大丈夫ですよ、なんとかして売ります。

ここでのポイントは「ネガティブな情報も提示すること」です。質問に対しての回答としては「海外で需要があるので大丈夫です」でも問題ありませんが、ここに「日本では嫌がる方が多くて……」というネガティブな情報を加えるとより信憑性が高まるからです。これはフリマアプリや行政サービスと自社サービスの比較をする際にも役立つ考え方です。

NG対応のように具体的な話を何もしないような回答では依頼者の不安や疑問を増やすだけで、何も解決しないので注意しましょう。

(ゴミ屋敷の)ゴミ、回収してどうするの?

<OK対応>
分別してリユース・リサイクルできるものは引き取らせていただきます。生活ゴミなどの明らかに再利用できないものについては、申し訳ありませんが別途専門の業者に委託するか、お客様自身で処理業者に持ち込んでいただく必要があります。ご了承ください。

<NG対応>
分別してこちらで処分します。(「捨てます」「廃棄します」も同様)

ここでも「あくまで古物営業許可の範囲内で品物を取り扱う」という旨を伝えることがポイントです。一般廃棄物収集運搬業許可を持っていない場合は、明らかに再利用できなさそうなものに関しては回収しないのが無難です。たとえリユース品に紛れ込ませても、無許可営業になってしまうからです。

したがってあらかじめ一般廃棄物の回収はできないこと、分別は可能だがその処分は別途許可業者に委託することなどを伝えておく必要があります。ホームページなどにも「回収料金は出張料金や搬出の際の人件費としてちょうだいいたします。当店はリユース・リサイクル目的で不用品を回収しております。明らかに再利用できない廃棄などはお引き取りいたしかねます」といった文言を記載しておきましょう。

NG対応は即無許可営業になってしまうので、くれぐれも注意が必要です。

質問対応のまとめ

最後にここまでのポイントをまとめておきましょう。

1.有価物と廃棄物の違いを理解し、自分たちが回収できるのは有価物であると依頼者に伝える。
2.依頼者から見て廃棄物に思えるものでも、手を入れることで有価物になるということを依頼者に伝える。
3.類似サービスと自社サービスの違いを理解し、依頼者に伝える。
4.自社サービスの収益化の方法を理解し、依頼者に伝える。

10個の質問とそれぞれのOK&NG対応だけでなく、これらのポイントも合わせて理解しておけば、10個の質問以外の質問をされたときにも臨機応変に対応できます。依頼者の質問にスムーズに回答して、より信用される不用品回収業者になりましょう。