リサイクルショップの商品
リサイクルショップのはじめかた【買取・仕入れルート編】では、リサイクルショップ経営の生命線である「買取」「仕入れ」について解説しましたが、当然買取や仕入れがうまくいっても、商品を販売するルートを確保できていなければ在庫を大量に抱えてしまいます。

ここでは3つの販売ルートと7つの販売促進策、そして他店との差別化の方法を紹介しながら、リサイクルショップが買取・仕入れを行なった商品をいかにして販売ルートに乗せているかを解説します。

INDEX
  1. リサイクルショップの3つの販売ルートとメリット・デメリット
    1. 手間要らずなルート「店頭販売」
    2. トラブル防止が肝!「通販・オークションサイト」
    3. アナログなコネクションを作ろう「事業者向け販売」
  2. リサイクルショップのための7つの販売促進策
  3. 他店との差別化を図ろう
    1. 他店がやっていないことまで手がける
    2. 他店がやっていることをあえてやらない
  4. アナログ×WEBで販売ルートを安定させる

リサイクルショップの3つの販売ルートとメリット・デメリット

リサイクルショップの販売ルートとしてメインになるのは以下の3つです。

1.お店にやってきた客に対して商品を販売する「店頭販売」
2.インターネットを利用した「通販・オークションサイト」での販売
3.飲食店や事業所などの家具や家電の大量発注が期待できる「事業者向け販売」

以下ではそれぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。

手間要らずなルート「店頭販売」

「店頭販売」のメリット

来店客に対して商品を販売する店頭販売のメリットは大きく2つあります。ひとつは成約してから出荷までのタイムラグが少ない場合が多く、即現金化しやすいという点。もうひとつは他の方法に比べて在庫管理コストや事務作業コストが基本的に低いという点です。

第一に店頭在庫を販売するため、倉庫に保管してある在庫を確認したり、改めて動作確認をしたりといった手間が省けます。第二に注文が入ってから仕入れる必要もないので、発注する作業も必要ありません。第三にその場で契約が成立するので、成約後の相手とのメールのやり取りや見積書・請求書の作成などの必要もなくなります。

この3つの点から店頭販売はあまり手間のかからない販売ルートだといえるのです。

「店頭販売」のデメリット

店頭販売にはデメリットもあります。それは売上が安定しづらいという点です。

例えば近隣に競合店がなければ価格競争がないぶん販売価格も高く設定しやすいのですが、競合店があると価格競争によって売上が低下しやすくなります。あるいは土地柄によっても販売価格や需要は変動しがちです。単身世帯が多い地域なら家電の需要が高まり、富裕層が多ければブランドバッグ・高級腕時計、高級家具や骨董品などの需要が高くなる傾向があります。

さらには同じ家電でも、ターゲット層の所得によって「古くてもいいから安いもの」「高くてもいいから新しくてきれいなもの」など需要は変わるので、それに合わせて販売価格も売上も変動していくのです。

このデメリットを解消するには、のちに紹介するような販売促進策を実施して地域での認知度を高め、来客数の分母を増やす必要があります。

「店頭販売」の注意点

店頭販売をするときに悩ましい問題のひとつが「送料込みの価格で販売するか、送料別の価格で販売するか」の判断です。確かに送料込みの方が見栄えがいいという側面はあります。例えば「ソファー本体1000円+送料5000円」よりも「ソファー送料込6000円」の方が、価格として納得感が出るのです。送料込で値段をつけておいて「無料配送」をアピールポイントにすることもできます。

しかし送料込みにはデメリットもあります。第一に表記の金額がどうしても高くなってしまう点。第二に車で持ち帰る人や貸出用の台車で自宅まで運ぶという客との差別化が図れないため、店側の配送コストがかさみがちになるという点。第三に自店の商圏外に配送するとなると配送コストで利益が削られてしまう点。この3点から、送料を別にして販売価格を決めるというリサイクルショップも少なくありません。

それぞれのメリット・デメリットを理解したうえでの判断が必要でしょう。

トラブル防止が肝!「通販・オークションサイト」

「通販・オークションサイト」のメリット

オークション

楽天市場やAmazon、ヤフオク!やメルカリなどの通販・オークションサイトでの販売には、「売上・販売価格の安定」と「在庫管理コストの低さ」という2つのメリットがあります。

「売上・販売価格の安定」が期待できる理由としては、そもそも実店舗に来店する客数よりもインターネットを通じて自店の商品を見る客数の方が多いということと、相場よりも異常に高く価格を設定しなければ実店舗よりも売れ行きが良くなるということが挙げられます。これは実店舗では手間と時間がかかる「客自身による他店との価格比較」が通販・オークションサイトでは簡単にできるためだと考えられます。

「在庫管理コストの低さ」が期待できる理由としては、実店舗に陳列せずに倉庫に在庫があっても販売できる点と、在庫を持たずに発注が入ってから仕入れを行うこともできる点などが挙げられます。またAmazonが提供している「フルフィルメント by Amazon」を利用すれば、商品をAmazonの倉庫に送っておくだけで、管理・配送を全てAmazonに行なってもらうこともできます。

「通販・オークションサイト」のデメリット

一方で通販・オークションサイトのデメリットは送料や販売手数料のコストのほか、取引相手との連絡や発送作業などの手間がかかる点です。顔を合わせないぶんマナーの悪い客も多く、いわれのないクレームに対応しなければならないケースもあります。

また実際に目で見て確認できないために、他のユーザーからの口コミが売上を大きく左右します。たとえ店側に落ち度がないとしても、相手が「対応の悪い店だ」と評価してしまうと、それだけで他の商品の売上に悪影響が出る可能性もあります。

「通販・オークションサイト」の注意点

こうした通販・オークションサイトのデメリットを解消するためには、事前にトラブル防止策を講じておくのが無難です。

例えばサイトに載せる写真はついきれいに見せたくなるものですが、必要以上にきれいに見せすぎると「写真と実物が違いすぎる」というトラブルに発展しかねません。実物に近づける形できれいに見せたり、逆に傷やシミなどがある場合はしっかりと写真に撮って説明書きを加えたり、「○枚目の写真が最も実物のお色味に近くなっています」などの注意書きを加えたりして、余計な誤解を招かないようにする方が安全です。

あるいは専門店以外が楽器やバイクパーツなどを販売する場合には、「当方素人のため、専門的な質問にはお答えいたしかねます」「当方素人のため動作確認等はしておりませんので、万が一動作不良などがございましても返品等はお受けいたしかねます」と書き添えておくと、余計なトラブルを回避しやすくなります。

アナログなコネクションを作ろう「事業者向け販売」

「事業者向け販売」のメリット

飲食店や事業所などに販売する事業者向け販売は、大量発注が期待できるという点と店頭販売よりも売上が安定しやすい点がメリットです。

例えば社員寮の管理会社と取引ができれば、社員寮の各部屋に設置する冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの家電や家具をまとめて受注できる可能性もあります。このほか学生寮の管理会社、不動産管理会社、ガソリンスタンドや居酒屋やバーなどとも取引できる可能性があります。

とりわけガソリンスタンドや居酒屋、バーなどの飲食店はチェーン展開をしていたり、地域の店同士のつながりが強かったりと「横のつながり」が強いため、口コミで評判が広まって安定した販売ルートになりやすい傾向があります。

「事業者向け販売」のデメリット

事業者向け販売のデメリットは大きく2つ。ひとつは大量発注になりやすいがために、発注が立て込んだ際の対応に時間がかかってしまう点です。店頭とインターネットで併売していると、なおさら在庫管理が複雑になり、対応ミスにつながる危険もあります。この点については徹底して正確な在庫管理体制を築いておく必要があるでしょう。

もうひとつは相手が事業者がであるがために、請求書作成が必要な企業や見積書が必要な企業、当月締め翌月支払いでしか対応できない企業など、対応がイレギュラーになりやすいという点です。ルーティンワークで処理ができないぶん、それだけ手間も時間もかかってしまいます。効率的に対応するにはフォーマット作成やマニュアル作成を進めて、イレギュラーな対応をできるだけルーティンワークで対応できるようにする努力が求められるでしょう。

「事業者向け販売」の注意点

前述したようにガソリンスタンドや居酒屋、バーなどの飲食店といった「横のつながり」が強い事業者にパイプを持てば、安定した大量発注が期待できます。

このときに重要になるのが「アナログなコネクション」です。事業者として大きな取引をするとなれば相応のコストがかかるため、相手も取引には慎重になります。そこで信頼してもらうには「互いに顔を知っていて、どんな人間かを理解している」というアナログなつながりが必要になるのです。「まとまった中古の家具・家電が欲しくなったら○○に頼もう」といったような認識を持ってもらえるようになれば、かなりの確率で継続的に発注や紹介をしてもらえるようになるでしょう。

また「紹介していただいたら○%割引」「口コミを投稿していただいたら○%割引」といった、自店で大量発注するメリットをきちんと提示するのもおすすめです。紹介するメリット、口コミを投稿するメリットを提示しておけば、相手の実際の行動につながりやすくなるからです。

リサイクルショップのための7つの販売促進策

リサイクルショップの販促

商品を安定的に販売ルートにのせるには、販売促進策が必要不可欠です。以下では代表的な販売促進策とその特徴を紹介します。

1.ポスティング(チラシ)

自店の商圏にチラシを配布する方法です。1回だけのポスティングでは費用の割に効果が出にくいとされており、定期的に繰り返し配布することで認知度が高まり、問い合わせや来店につながっていくとされています。

不特定多数に配布するため効果が出る確率は低く、実際に問い合わせや来店につながるのは配布した枚数の0.01%〜0.3%程度(1万枚に対して1〜30人程度)。ポスティングのエリアを効果的に絞り込めるのならまだしも、それが難しいのであれば比較的難易度の高い販売促進策です。

2.ダイレクトメール

キャンペーンやセール、商品の情報などを電子メールで見込み客に送付する方法です。ポイントになるのは送付先で、リスト業者と呼ばれるメールアドレスのリストを販売する業者から、自店のターゲットに合ったリストを購入できれば、比較的低コストで問い合わせや来客につなげることができます。

3.WEB広告

検索エンジンのユーザーが検索したキーワードをもとに広告を表示する「リスティング広告」や、インターネットの利用履歴をもとにSNSに広告を表示する「SNS広告」などを総称してWEB広告と呼びます。不特定多数にチラシを配布するような方法とは違い、興味のある人のところに興味のある広告を表示できるため、問い合わせや来客につながりやすい方法といえます。

しかし広告に紐づけたWEBページやホームページの内容が貧弱だと、せっかくのWEB広告も効果が出ません。広告を通じてWEBページやホームページを訪問した人が、「このリサイクルショップに行ってみよう」と思えるような内容にする必要があります。

4.新聞広告

新聞の紙面に広告料を支払って広告を掲載する方法です。新聞を購読している層(60代以上)に対しては効果が期待できるため、貴金属や着物などのカテゴリーを取り扱うのであれば、販売促進策の候補として有力かもしれません。しかし近年単身者を中心に全世代を通して新聞を読まない層が増えているため、WEBと比べると広告効果はあまり期待できません。

5.小冊子

自店のサービス内容や取扱品目、あるいはこだわりなどを小冊子にして店頭や街頭に設置する方法です。自店を詳しく紹介するにはぴったりの方法で、ターゲット層が集まる場所に設置できれば問い合わせや来店につながりやすくなるでしょう。例えばブランド品はカフェや美容院、フィギュアやポスターなどのサブカルチャーグッズはその手のお店が多い喫茶店や飲食店などに置くとターゲット層の目に止まりやすくなります。

6.オウンドメディア

自店のブログや情報サイトを作り、そこからターゲット層が求めているような情報を発信することで認知度を高め、問い合わせや来店につなげるという方法です。リサイクル業界で言えばブックオフコーポレーションの「BOOKOFF Online コラム」などが挙げられます。

ただし高品質な情報を発信することと、定期的に更新することが条件なので、手間やコストはある程度必要になります。しかしそのぶん問い合わせや来店につながりやすく、WEB広告の効果も高まりやすいという強みがあります。

7.事業者間の口コミ

事業者間の「横のつながり」を利用して、自店を紹介してもらう方法です。前述したような「紹介していただいたら○%割引」「口コミを投稿していただいたら○%割引」といった方法のほかに、事業者向けの買取・仕入れを強化して専用在庫を確保しておいたり、ITシステムの導入などで事務コストを抑えたりして、迅速かつ正確に対応できる体制を整えるのも、事業者に自店をアピールするのに効果的です。

他店との差別化を図ろう

販売促進策によって自社や自社の商品を知ってもらっても、それだけで売上や利益につながるわけではありません。直接販売につながるような作戦を立てたり、あるいは余計なコストやリスクをカットして必要な商品や業務に力を注ぐ体制を作ったりして、他店との差別化を図る必要があります。以下ではその具体的な例を2つ紹介します。自店の差別化を考えるうえでのヒントにしてみてください。

他店がやっていないことまで手がける

民泊向けのサービス

「リサイクルショップはそこまでやらない」と自分や他店が思っているようなことをできるようになれば、それだけで差別化になります。

例えば2018年6月15日に施行が決定した「住宅宿泊事業法(民泊新法)」で話題の民泊業者に対して、家具・家電のセレクトから搬入・設置まで全てを請け負うセットアップサービスを提供すれば、資金力や人手のない個人営業の民泊業者などに喜ばれます。新しい試みで新たな販売ルートが確立できれば、それだけ売上も安定化します。

確かにケースバイケースの対応が求められたり、市場の動向によって成否が左右されたりとコストやリスクは覚悟しなければなりませんが、それだけの価値は十分あるでしょう。

他店がやっていることをあえてやらない

逆に他店が当たり前のようにやっていることを、あえてやらないというのも差別化につながります。

例えば「取扱品目の拡大」をやらないというのもひとつの方法です。金・プラチナ、腕時計やブランド品などは多くのリサイクルショップが取り扱っていますが、実はこれらは鑑定や査定が難しいうえ、必ずしも家具・家電と販売ルートが一致するわけではないので、安定して取り扱うには時間と人手が必要になります。

確かに取扱品目を拡大すれば「ここに持っていけばとりあえず何でも売ってくれる・買い取ってくれる」という安心感を作り出せます。しかし同時にコストばかりがかさんで本末転倒になる可能性もあります。これをあえてやらないという方針をとれば、新しい品目に対応するコストを節約して、現在取り扱っている品目に力を注げるようになります。

アナログ×WEBで販売ルートを安定させる

リサイクルショップが商品を安定して販売ルートにのせるには、それぞれの販売ルートの性質を理解するだけでなく、アナログ・WEB両方から販売促進策を実施するとより効果的です。アナログだけ、WEBだけでもある程度の販売促進効果は期待できますが、やはり両方実施した方がより多くの販売が期待できます。

買取・仕入れをした商品を効率的に販売するためにも、今一度販売ルート・販売促進作選びを見直してみましょう。