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不用品回収業者は主に次の4つの法律に基づいて営業しなければなりません。

・古物営業法
・廃棄物処理法
・家電リサイクル法
・特定商取引法

これらの法律にはそれぞれ罰則規定が設けられており、それらに違反すると営業停止命令や罰金刑、場合によっては禁固刑などが課せられることもあります。もちろん違法行為をしないことが第一ですが、それを理解するためにも各法律にどのような罰則があるのかは知っておくべきでしょう。

ここでは各法律の罰則を紹介するとともに、営業停止命令や刑事罰を回避するための考え方についても解説します。

INDEX
  1. 古物営業法の罰則規定
  2. 廃棄物処理法の罰則規定
  3. 家電リサイクル法の罰則規定
  4. 特定商取引法の罰則規定
  5. 行政指導に従えば大ごとにはなりにくい
  6. まとめ

古物営業法の罰則規定

罰則 違反行為
3年以下の懲役
または100万円以下の罰金
・無許可営業
・名義貸し
1年以下の懲役
または50万円以下の罰金
法定場所外営業
6月以下の懲役
または30万円以下の罰金
・取引相手を確認しない
・古物台帳に取引内容を記録しない
・古物台帳を保管していない
10万円以下の罰金 ・許可証の不携帯
・HPに許可証番号等の表示をしない

このほか、10万円以下の罰金に該当する違反行為としては、古物営業の廃業などから10日以内に許可証を返納しないことや、取り扱う品目などの営業内容の変更を届け出ないことなどがあります。

廃棄物処理法の罰則規定

罰則 違反行為
5年以下の懲役
もしくは1,000万円以下の罰金
またその両方
・無許可営業
・営業許可の不正取得
・事業範囲の無許可変更
・不法投棄
・事業停止命令に従わない。
・許可業者以外に廃棄物を委託する。
3年以下の懲役
もしくは300万円
以下の罰金
またその両方
・不法投棄を目的に廃棄物の収集運搬を行う。
・収集運搬業者もしくは処分業者が、委託を受けた廃棄物を再委託する。
2年以下の懲役
もしくは200万円
以下の罰金
またその両方
スクラップなどの有価物の中に廃棄物を混ぜ込んで輸出する「無確認輸出」を行う目的で、その準備をする。
1年以下の懲役
または50万円
以下の罰金
マニフェストを交付しない、虚偽の記載をするなど、マニフェストに関する違反行為を行う。
6月以下の懲役
または50万円
以下の罰金
・各種許可業者が欠格要件に該当するに至ったにもかかわらず、その届出をしない。
・受託した廃棄物の処理が困難になったにもかかわらず、その通知をしない。もしくは虚偽の通知をする。

廃棄物処理法は家電リサイクル法などのもととなった大きな法律なので、これ以外にも様々な罰則と違反行為が定められています。そのため一般廃棄物収集運搬業許可や産業廃棄物収集運搬業許可などを取得している、もしくは取得の予定がある不用品回収業者は、あらかじめ各自治体などに適切な営業や手続きの方法を確認しておく方が無難でしょう。

またこれらの許可を持たない不用品回収業者も、無許可営業などの重大な違反行為を犯さないよう、十分な注意が必要です。

家電リサイクル法の罰則規定

罰則 違反行為
50万円以下の罰金 ・小売業者が公表している収集運搬料金が適正原価を大幅に超えている場合で、それについての行政からの料金変更命令に従わない。
・正当な理由がないのに廃家電の引き取り、引渡しをしない小売業者で、それについての行政からの引き取り、引渡し命令に従わない。
・製造業者が公表しているリサイクル料金が適正原価を大幅に超えている場合で、それについての行政からの料金変更命令に従わない。
30万円以下の罰金 ・指定法人で、帳簿に必要事項を記載、保存しなかったり、虚偽の記載を行う。
・指定法人で、行政からの立ち入り検査を拒否もしくは妨害する。
20万円以下の罰金 ・小売業者もしくは製造業者が、リサイクル業務や資産状況に関する報告を行政から求められた場合に、これを拒否もしくは虚偽の報告を行う。
・小売業者もしくは製造業者で、行政からの立ち入り検査を拒否もしくは妨害する。
10万円以下の過料 製造業者で、家電に自社の名前の表示をしない、もしくは虚偽の表示をする。

家電リサイクル法の罰則は上表の通り、小売業者・製造業者・指定法人(財団法人家電製品協会)に対するものばかりになっています。そのため不用品回収業者に対して直接的に家電リサイクル法の罰則が適用される事態は考えにくいと言えます。

ただし家電リサイクル法により、小売業者もしくは製造業者以外が対象家電の収集運搬を行うと、廃棄物処理法上の無許可営業とみなされる可能性があります。

そのため家電リサイクル法対象家電の収集運搬を行う際は、一般廃棄物収集運搬業許可を取得するか、「家電リサイクル法の例外」をフル活用しよう!一般廃棄物収集運搬業許可なしでも合法的に家電を回収する方法で紹介した方法を実践する必要があります。

特定商取引法の罰則規定

罰則 違反行為
3年以下の懲役
または300万円以下の罰金
またはこの両方
訪問購入の際に、買取の契約をするために取引相手に対して虚偽の事実を告げる(価格や支払いの時期や方法など)。
2年以下の懲役
または300万円以下の罰金
またはこの両方
行政からの訪問購入にかかわる業務停止命令に従わない。
100万円以下の罰金 ・取引相手に対して、物品の種類や価格、支払い時期や方法、クーリングオフ制度などの取引内容について記載した書面を渡していない。もしくは虚偽の内容の書面を渡す。
・取引相手の不利益につながるような違反行為に対して、行政から是正の指示があったにもかかわらず、これを実行しない。

特定商取引法には他にも多くの罰則と違反行為が定められていますが、ここでは不用品回収業者が行う出張買取(法律上は「訪問購入」と呼ばれる)についての罰則と、違反行為をまとめています。

訪問購入は一歩間違えると押し買いという悪徳商法とみなされる場合があります。しかもその判断は訪問購入を行う不用品回収業者ではなく、回収の依頼者や依頼者から報告を受けた行政が下します。そのため不用品回収業者からすれば問題のない対応でも、押し買いとみなされる可能性は十分あるのです。

不用品回収業者・出張買取業者が「押し買い」と誤解されないための4つのルールでは、このような事態に陥らないためのポイントを解説しています。余計なトラブルに巻き込まれないためにも、ぜひ参考にしてください。

行政指導に従えば大ごとにはなりにくい

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ここまで見てきた各法律の命令や処分の前には、通達や指導、勧告といった行政指導が行われる場合があります。例えば家電リサイクル法の第十五条と第十六には次のように書かれています。

第十五条 主務大臣は、小売業者に対し、第九条に規定する特定家庭用機器廃棄物の引取り又は第十条に規定する特定家庭用機器廃棄物の引渡しの実施を確保するため必要があると認めるときは、当該引取り又は引渡しの実施に関し必要な指導及び助言をすることができる。

第十六条 主務大臣は、正当な理由がなくて前条に規定する引取り又は引渡しをしない小売業者があるときは、当該小売業者に対し、当該引取り又は引渡しをすべき旨の勧告をすることができる。
2 主務大臣は、前項に規定する勧告を受けた小売業者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、当該小売業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
引用元: 家電リサイクル法

これによれば、家電リサイクル法の対象廃家電の適切な引き取り・引渡しをしなかった小売業者は、指導及び助言→勧告→命令を受けたあと、最終的に50万円以下の罰金が下されることになります。したがって指導及び助言の段階、もしくは勧告の段階で従っていれば、命令や処分にまでは至らないのです。

もちろん違反行為をしないことは大前提です。しかし日々の煩雑な業務の中で、知らず知らずのうちに違法行為を犯してしまうこともないわけではありません。そのような場合は、通達や指導、勧告といった行政指導を受けることになりますが、その時点で行政指導に従えば、基本的には営業停止や罰金刑、禁固刑といった大ごとには発展しにくいと言えるのです。

しかしこのように法律の条文中に、前段階として通達や指導、勧告といった行政指導が行われる旨が明記されていない罰則もあります。これらは違反行為を犯してしまった時点で、いきなり罰則が適用されるのでしょうか。この点について各法律を管轄する公的機関に問い合わせてみました。下表はそれぞれの公的機関の回答内容です。

関連する法律 問い合わせた
公的機関
回答内容
古物営業法 大阪府浪速警察署 保安課 個別の事案、違法行為の内容によるが、基本的にいきなり罰則が適用されることはほぼない。
廃棄物処理法 東京環境局
産業廃棄物対策課
・個別の事案、違法行為の内容によるが、基本的にいきなり罰則が適用されることはあまりない。
・条文に明記されているものは罰則適用までに行政指導が入ることが決まっているが、それ以外のものは決まっていないため、いきなり適用されることもあり得る。
家電リサイクル法 経済産業省
商務情報政策局情報産業課
条文に明記されているものは罰則適用までに行政指導が入ることが決まっているが、それ以外のものは決まっていないため、いきなり適用されることもあり得る。
特定商取引法 経済産業省
近畿経済産業局
・我々としては行政手続法に基づいて処分なり、行政指導なりを行う。
・それに従ってもらえない場合は警察と連携し、罰則を適用する。
・ただし警察が単独で罰則を適用したり、条例に基づいて自治体が適用を行う場合もある。

これを見ればわかるように、罰則の適用については法律や管轄の公的機関によって微妙な見解の違いがあります。そのため「公的機関Aでは罰則の適用にならなくとも、公的機関Bでは適用になる」というケースも十分考えられます。

そのため先ほど見たような、行政指導→処分・罰則の手順が明記されていない違反行為に関しては、いつ処分や罰則が下されてもおかしくないと考えるのが妥当でしょう。

以上のことから言えるのは、そもそも違反行為をするべきではないという至極当たり前な結論です。それが行政指導への対応の手間や時間、処分や罰則を適用されるリスクを回避するための唯一にして最善の策なのです。

まとめ

古物営業法、廃棄物処理法、家電リサイクル法、特定商取引法の4つの法律の罰則の中には、違反行為をしたからといって即適用されるわけではないものもあります。こうした罰則に関しては、仮に行政指導を受けた場合でも、指導内容にしたがって営業体制を修正すれば営業停止や刑事罰のような大ごとになる可能性を、最小限に抑えられます。

しかしそれ以外の罰則に関しては、管轄の公的機関でも対応が分かれており、即適用される可能性も十分にあります。また「行政指導だけで済む」と言っても、行政への対応は手間も時間もかかります。営業に全く支障が出ないわけではありません。

結論として言えるのは、至極当たり前なことです。すなわち行政指導への対応の手間や時間、処分や罰則を適用されるリスクを回避するための最も効果的な方法は、そもそも違反行為をしないことなのです。

とはいえ、多忙な毎日を送っていれば知らず知らずのうちに違反行為を犯してしまうこともあるかもしれません。しかしその際に行政からの指導や指摘を受けた場合でも、真摯に対応すれば最悪の事態は免れるということを覚えておきましょう。