浮気調査の道具

便利屋業を営んでいれば、様々な種類の依頼が舞い込んできます。その中には「旦那が浮気をしていないか調査をして欲しい」「離婚調停を有利に進めるために妻の浮気の証拠を掴んで欲しい」「結婚前に彼氏が浮気をしていないか確かめて欲しい」といった浮気調査の依頼もあります。

便利屋を開業する前に知っておくべき8つのことでも解説したように、便利屋のサービスの中には許可や届出、資格が必要なものがいくつもあります。実は浮気調査もその一つ。ここでは浮気調査をサービスとして行うために必要な届出の提出方法や必要書類、提出後の注意点などについて解説します。

INDEX
  1. 浮気調査をするには探偵業の開業届が必要
  2. 探偵業の開業届の提出方法・必要書類
  3. 開業届提出後に守るべきルール
  4. まとめ

浮気調査をするには探偵業の開業届が必要

浮気調査や素行調査をするとなれば、調査対象の勤務先などに張り込んだり、依頼者と一緒にいないときの行動を尾行する必要があります。また証拠を押さえるためには、浮気相手などとの密会の瞬間を小型ビデオカメラなどを使って撮影する必要もあります。そうして調査結果を報告書としてまとめ、証拠とともに依頼者に引き渡すまでが仕事になります。

こうした一連の作業は、探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)が定義する探偵業務そのものです。同法では探偵業務を以下のように定義づけています。

第二条 この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。
引用元: 探偵業法

したがって浮気調査のために張り込みや尾行をし、その結果を依頼者に報告するのは探偵業務に該当します。同法は各営業所ごとに探偵業の開業届を提出義務付けているため、便利屋が浮気調査をする場合でも開業届が必要になるのです。

探偵業法は平成19年6月に施行された比較的新しい法律ですが、それまで探偵業のような調査業を規制するような法律は日本には存在しませんでした。しかし当時の探偵社や興信所等の営業がもとで、調査依頼者との契約内容などをめぐるトラブルが増加したり、違法な手段による調査や調査対象者の秘密を利用した恐喝などの犯罪が発生したりするようになり、これを問題視した行政により同法の成立に至っています。

探偵業界にこれから参入する便利屋も、こうした探偵業法の成立背景を理解したうえで、適切な営業を行う必要があります。

探偵業の開業届の提出方法・必要書類

提出期限 営業を開始しようとする日の前日まで
提出場所 営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(所轄の警察署)
手数料 3,600円
必要書類(個人) ・探偵業開業届
A.履歴書および住民票の写し
B.欠格事由に該当しない旨を誓約する書面
C.成年被後見人または被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書
・未成年の場合は法定代理人のA〜B
必要書類(法人) ・探偵業開業届
・定款および登記事項証明書
・役員全員のAおよびC
・役員全員が欠格事由の1〜4に該当しない旨を誓約する書面

開業届には商号、名称または氏名及び住所のほか、営業所の名称と所在地、広告や宣伝に使う際に使用する名称(ある場合のみ)、役員の氏名と住所(法人の場合のみ)を記載しなければなりません。開業届のフォーマットは各警察署のホームページや警視庁のホームページからダウンロードできます。

またこの表中で触れられている探偵業法の欠格事由は以下の通りです。

探偵業法上の欠格事由
1.成年被後見人もしくは被保佐人、または破産後に資格制限の解除を受けていない(復権を得ていない)者
2.禁固刑以上の前科がある、もしくは探偵法違反で罰金刑の前科があって、刑の執行後もしくは刑の執行終了後から5年経っていない者
3.最近5年間に、探偵業の営業停止もしくは廃止命令に従わなかった者
4.暴力団に所属している者、もしくは暴力団員でなくなってから5年以内の者
5.成年者と同等の営業能力がない未成年者で、その法定代理人が上記の欠格事由に該当する者
6.法人で、役員の中に欠格事由に該当する者がいる場合

もしこのいずれかに該当する場合は、便利屋としての浮気調査サービスの提供は諦めなければなりません。

開業届提出後に守るべきルール

探偵の男性

探偵業の開業届は、提出したらそれで終わりというわけではありません。ルールを守って適切に営業していく必要があります。その際のルールは以下の12個です。

1.開業届提出後に手に入る探偵業届出証明書を営業所の見やすい場所に掲示する。
2.営業所ごとに従業者名簿を備えて、氏名・採用年月日・従事させる探偵業務の内容を記載する。
3.従業者に対し、適切な探偵業務実施のための教育を施す。
4.業務上知り得た人の秘密を漏らさない。
5.探偵業務に関して作成・取得した資料の不正利用防止措置をとる。
6.調査結果が違法な差別的扱い・そのほかの違法行為に使用されることを知った時は、その調査を行わない。
7.探偵業務を探偵業者以外に委託しない。
8.契約時に依頼者から「調査結果を違法な差別的扱い・そのほかの違法行為に使用しない」という旨の書面の交付を受ける。
9.契約前にはあらかじめ契約者に対して、書面を交付して重要事項を説明する。
10.契約後は契約の内容を明らかにする書面を交付する。
11.ほかの法令で禁止・制限されているような行為を行なわない。
12.人の生活の平穏を害するなどの個人の権利利益を侵害しないようにする。

これらのルールを探偵業法の成立背景と見比べると、同法成立以前にいかに探偵社や興信所などでのトラブルが多かったかがわかるのではないでしょうか。

なお、開業届を提出せずに探偵業を営んだり、この12個ルールを守らなかったり、都道府県公安委員会からの報告・資料提出や立入検査等の拒否・妨害などを行ったりした場合には、探偵業法違反として罰則が設けられています。

罰則は違反内容に応じて変わりますが、最大で1年以下の懲役または30万円以下の罰金、最低でも30万円以下の罰金とされています。

まとめ

人によっては「浮気調査くらい、経験や知識がなくてもなんとかやれる」という人もいるかもしれません。確かに経験や知識なしに浮気調査サービスを提供するのは違法ではありませんが、開業届を出さずに浮気調査サービスを提供すれば違法です。

したがって便利屋が浮気調査の依頼を受けるためには、探偵業法に基づいた開業届を提出し、かつ探偵業法に基づいた営業を行わなければなりません。今後便利屋として浮気調査もサービスに加えたいと考えている人は、あらかじめ取得しておくようにしましょう。