デジタル

今リサイクル業界は中国雑品スクラップ市場の閉鎖に、少なからず影響を受けています。しかもどうなる雑品スクラップ!中国の現状と今後の方向性は?でも見たように、雑品スクラップ市場の復活は望み薄としか言えないのが現状です。そのためリサイクル業者には、今後いかにして事業を維持・拡大するかのアイデアが求められています。

ここではそのアイデアの一つとして、遺品整理の新分野といも言えるデジタル遺品整理について紹介します。

INDEX
  1. 需要拡大ほぼ確実!デジタル遺品整理
    1. デジタル遺品とは?
    2. 「デジタル遺品整理」は何をするサービスか?
    3. デジタル遺品整理サービスがこれから流行る理由
  2. デジタル遺品整理サービスの注意点
    1. 技術や専門知識が必要になる
    2. 法整備が全く追いついていない
  3. まとめ

需要拡大ほぼ確実!デジタル遺品整理

デジタル遺品とは?

デジタル遺品とはスマートフォンやPCなどに残された写真・動画を始め、故人が運営していたブログやSNSに遺された情報、仮想通貨口座などを含むネットバンクの口座、課金サービスのアカウント情報などを指します。この中には故人にとって他人や家族に見られたくない情報もあれば、遺族が遺産相続をする際に必要になる情報も入っています。

しかし予想だにしない事故で亡くなってしまったり、病院に入院したまま亡くなってしまったりすれば、そうした情報を消去することはできませんし、パスワードやIDがわからなければ遺族が遺産を把握することもできません。こうした問題をはらんでいるのが、デジタル遺品の特徴です。

実際問題として税理士などの専門家でもデジタル遺品の全てを把握しきれず、税務署からの調査が入ってからネットバンクの遺産の存在が明らかになるケースも増えていきています。

「デジタル遺品整理」は何をするサービスか?

パソコンと南京錠

デジタル遺品整理とは、故人や遺族がこうした事態を陥らないために、生前もしくは死後にデジタル遺品の整理を請け負うサービスです。具体的には生前に故人自身が見られたくないデータの物理破壊を行うサービスや、故人が任意で設定した期間を超えてPCにログインがない場合に、サービス提供者側のパスワードロックが自動的にかかるというサービスもあります。

このほか、死後に遺族からの依頼でスマートフォンやPCのパスワードロックを解除したり、ネット口座の有無を調査したり、データの抽出や削除をしたりと、業者によって様々なサービスを提供しています。

デジタル遺品整理サービスがこれから流行る理由

まだまだスタートしたばかりの時期にあるデジタル遺品整理サービスの分野ですが、大きく3つの理由で今後の需要拡大はほぼ間違いないと考えられます。3つの理由とは以下の通りです。

1. 高齢者のデジタルツール活用は今後も増え続ける
2. 急速に進行するスマートフォンの財布化
3. キャリアやメーカーは故人のスマートフォンを開けない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

高齢者のデジタルツール活用は今後も増え続ける

スマホを操作する高齢者

総務省の「情報通信白書 平成30年度版」によれば、高齢者(60歳以上)のインターネット利用者の割合は2008年〜2017年の間に大きく増加しています。60代で51.5%から73.9%に増加し、70代でも27.7%から46.7%に増加、80代では14.5%〜20.1%に増加しました。

同白書のスマートフォンの個人保有率の推移を見ても各世代で年々増加していることからも、今後高齢者におけるスマートフォンをはじめとするデジタルツールの活用は、ますます拡大していくことが予想されます。

これはつまり、遺品に占めるデジタル遺品の割合が増加していくということでもあります。そのためデジタル遺品整理サービスの需要も、同じように増加すると考えられるのです。

急速に進行するスマートフォンの財布化

高齢者へのデジタルツールの浸透よりも速度感を強めているのが、スマートフォンの財布化です。諸外国のキャッシュレス化を受けて、東京オリンピックを控えた日本では国や自治体をあげてのキャッシュレス化の動きが高まっています。その動きに応えるかのようにスマートフォン決済サービスも立て続けにリリースされており、キャッシュレス化がスマートフォンユーザーに浸透し始めています。

韓国では全取引の9割近く、カナダやイギリスでは過半数の取引がキャッシュレスで行われています。こうした状況を考えると、今後日本でもキャッシュレス化が浸透し、財布の代わりにスマートフォンが使われる光景が一般化していくでしょう。

そうなれば直接的な資産だけでなく、取引履歴や自動引き落とし契約といった情報もスマートフォンの中で完結するようになります。そのような状況で持ち主の死後にパスワードがわからずスマートフォンが開けないとなれば、遺族にとって「まあいいか」では済まされません。

このような背景からも、デジタル遺品整理サービスの需要は拡大していくと考えられるのです。

キャリアやメーカーは故人のスマートフォンを開けない

指でバツを作るスーツの男性

デジタル遺品をめぐる状況の変化があるにも関わらず、現時点ではキャリアやメーカーに故人のスマートフォンを持ち込んでも、契約解除はもちろん、パスコードのロック解除も行なってはくれません。これには企業側の責任問題や技術的な問題もあり、今後も大きな変化は起きないと予想されます。

つまり高齢者のデジタルツール活用が拡大し、資産におけるデジタルツールの役割も大きくなっていくなか、これらのツールをデジタル遺品として整理する受け皿だけがないという状況になるのです。

もしここでデジタル遺品整理という形で、遺族が抱える悩みを解決することができれば、高い確率でビジネスとして成立するというわけです。

デジタル遺品整理サービスの注意点

前述の3つの理由から、デジタル遺品整理サービスが今後伸びていくのはほぼ間違いないと言えます。しかしだからといってサービスとして展開するのが簡単なわけではなく、むしろ現時点では難しいとさえ言えます。以下ではデジタル遺品整理サービスの注意点を2つの視点から見ておきましょう。

技術や専門知識が必要になる

そもそも「故人のスマートフォンのパスコードロックが解除できない」というシンプルな案件に対応するだけでも、専門的な技術と知識が必要不可欠になります。しかも今後スマートフォンが資産管理において重要な位置を占めるようになるほど、より強固なセキュリティが必要とされるようになります。これは将来、ハッキングでのスマホのアンロックがほぼ不可能になっていくことを意味しています。

技術や専門的知識が必要になるのであれば、そのぶんサービスの提供価格も引き上げたいところですが、今のところはデジタル遺品整理の社会的な価値が低いため、単体ビジネスとして成立させるのが難しいというのが現状となっています。

技術的な難しさや市場価値との折り合いを考えると、遺族へのヒアリングからパスワードを引き出すといったソーシャルエンジニアリングの手法も必要になるでしょう。

法整備が全く追いついていない

法律の本とガベル

オンラインサービスの契約解除や資産調査をする場合は不正アクセス禁止法に抵触する恐れがあり、データの物理破壊の生前契約も諸々の法的リスクを抱えています。しかし実際は孤独死をした故人と契約を交わしていた場合は、部屋の鍵を破壊するなどして部屋の中に入る必要性も生じてきます。

今の日本ではこうした状況を「法的に問題がない」と説明するための環境が整っていません。これはリサイクル業界全般にも言えることですが、現実に法律が全く追いついていないのです。

そのためサービスとして提供する際は弁護士などに協力を仰ぐなどして、細心の注意を払う必要があるでしょう。

まとめ

デジタル遺品整理サービスは、まだサービスとして未熟な部分も多く、参入してすぐに収益化できるかには疑問も残ります。そのためサービスとして成熟し、法律が整備されてから参入するという判断も、一概に「遅い」とは言えない状況です。

しかし現在の市場の流れを見れば、デジタル遺品整理サービスの需要が拡大していくのはほぼ間違いがありません。今から地盤を固めておけば、5年後〜10年後の利益拡大につながる可能性は、かなり高いと言えるでしょう。

どちらの決断が吉と出るかはケースバイケースです。自社の現状を考えて、最適と言える判断を下しましょう。