シカゴ
販路拡大の有力候補!リサイクルショップはイーベイをもっと活用しようで紹介したように、インターネットを通じて個人が海外から商品を買う越境ECの市場規模が急速に拡大しています。現時点の日本ではまだメジャーではないものの、今後訪日外国人観光客が増加していくなかで、リサイクル業者にとって重要な販路の一つになることは間違いがありません。

ではどのような形で越境ECをスタートさせるのが良いのでしょうか。その答えは現地モールでの出店です。ここでは5つの出店パターンを紹介しながら、現地モール出店のメリットについて解説。そのうえでアメリカ、中国、東南アジアの主要中古ECモールと、すでに現地モールに出店している日本のリサイクル業者の実例を紹介します。

INDEX
  1. 越境ECを始めるときの5つの出店パターン
  2. アメリカ・中国・東南アジア……各国の主要モール
    1. アメリカを主戦場とする世界最大中古品モール「イーベイ」
    2. アリババが運営する「閑魚」など中国の中古品モール
    3. 人口が増え続ける有望地域東南アジアの「REEBONZ」
  3. 越境ECにおける「現地モール出店」の実例
    1. 「ブランディア」の株式会社デファクトスタンダード
    2. コメ兵は東南アジアの大手モールに出店
  4. まとめ

越境ECを始めるときの5つの出店パターン

越境ECを始める際の、典型的な出店パターンが以下の5つです。

1.海外顧客への個別対応
2.国内資本の越境モールへの出店
3.現地モールへの出店
4.現地支店、事業所の設立
5.現地法人の設立

1は海外から国内の自社サイトなどに問い合わせをしてくる顧客に対して個別に対応するという方法です。

コストはほとんどかかりませんが、顧客にしてみれば言葉のわからない国のサイトにアクセスして、言葉のわからない相手とやりとりをしてようやく商品を手に入れられるわけですから、非常にハードルが高くなります。そのため、越境ECでの売り上げはほとんど期待できないと思ってもいいでしょう。

2は海外で展開している国内企業のモールに出店するという方法です。出店等のやり取りが日本語になるため楽ではありますが、リスクもあります。

というのも日本国内のモール運営のノウハウが海外では全く通用しないというのは、よくある話だからです。実際楽天が2010年から東南アジア向けにモールを展開していましたが、売上不振で2016年に撤退しています。せっかくコストをかけて出店しても、モール自体が閉鎖になれば全ては水の泡。2の方法は、そうしたリスクも覚悟の上で選ぶ必要があります。

4と5は現地に拠点を作り、そこに日本からの在庫を送るなどしてビジネスを展開する方法です。成功すれば大きな売上も期待できますが、莫大なコストや手間、時間がかかることは言うまでもありません。

たしかに資金力のある事業者のなかには、すでに中国などに拠点を作り、事業を展開しているところもありますが、中小リサイクル事業者がいきなり手を出すにはリスクが高すぎるでしょう。

丸印を掲げる女性

売上への期待値と、リスクやコストのバランスが最も良いと言えるのが3の方法です。

日本の中古品ECサイトと言えば「ヤフオク!」や「メルカリ」などが代表的ですが、いまや世界各国で類似のサイトが運営されています。こうしたサイトは各国内ですでに知名度を得ているため、サイト内での集客さえできれば十分売上が期待できますし、2の方法のようなモール閉鎖のリスクも比較的に抑えられます。

たしかにサイト内での集客は簡単なことではありません。国内モールでもモール内の集客アドバイザーが商売になるくらいですから、海外モールでの集客を成功させるにはSNSをはじめとする集客ツールなどをフル活用する必要もあるでしょうし、場合によっては専任スタッフや特別な予算を組む必要もあるでしょう。

しかしそうしたコストを考えても、1〜5の出店パターンのうち、最もバランスがとれているのは3の方法なのです。

アメリカ・中国・東南アジア……各国の主要モール

アメリカを主戦場とする世界最大中古品モール「イーベイ」

イーベイ
引用:https://www.ebay.com/

イーベイは世界中で1.6億人、Seller(販売する側)は2,500万人と、世界最多の利用者を持つインターネットオークションサイトです。

同社はイーベイ・ジャパンという日本法人も運営しており、越境ECサイト立上げ、EC運営代行、海外向けWEB作成、システム開発、展示会、マッチング、販路開拓、営業支援、テスト販売の分野で販売店支援も行っているため、越境ECの入り口としては比較的ハードルが低いと言えます。

アリババが運営する「閑魚」など中国の中古品モール

中国国旗

急速に経済発展を遂げた中国は、高度経済成長期を迎えたかつての日本のように大量生産大量消費のツケに頭を悩ませています。つまり「買ったはいいものの、使っていないモノをどうすればいいのかわからない」という状態になっているのです。そこで市場を開拓し始めたのが中古品取引のサービスです。

代表的なモールとしては世界最大のB to B取引プラットフォーム「アリババ」が運営する「閑魚」、大手の現地生活情報サイト「58同城」が運営する「転転」、ECサイト「JD. com」を運営する京東の「拍拍二手」などがあります。

ただし中国での事業展開に関しては様々な規制に対応していく必要があるので、非常に大きなマーケットではあるものの、「気軽に出店」というわけにはいかないのが現状です。そのため今慌てて出店を目指すよりは、動向を観察して、規制が緩和されたタイミングを狙う方が賢明な判断かもしれません。

人口が増え続ける有望地域東南アジアの「REEBONZ」

REEBONZ
引用:https://www.reebonz.com/jp

REEBONZは新品ブランド品や中古ブランド品を専門に扱うECサイトとして2009年3月にスタートし、本拠地を置くシンガポール以外にもマレーシア、インドネシア、台湾、タイ、オーストラリア、韓国で事業を展開しています。

ルイヴィトンやエルメスといったハイブランド品を専門に扱っているため、参入できる事業者は限られていますが、同商圏内での事業規模は最大です。

越境ECにおける「現地モール出店」の実例

グローバル流通網

実際に越境EC市場めがけて現地モールに出店しているリサイクル事業者も少なくありません。以下では米国のイーベイに出店して大きな成果を上げている株式会社デファクトスタンダードと、2019年初頭に東南アジアの大手モール「REEBONZ」への出店を決めたコメ兵の事例を取り上げます。

「ブランディア」の株式会社デファクトスタンダード

株式会社デファクトスタンダードは「ブランディア」「ブランディアオークション」「ブランディアレンタル」などを展開し、ヤフオク!でも毎年のように年間ベストストアアワード上位にランクインする中古ブランド品の取扱事業者です。

同社は2010年ごろからイーベイに出店しており、コツコツと社内の在庫連携の仕組みを整え、同モールへの出品数を拡大してきました。その結果、2018年第三四半期時点で売上構成比7.8%、通期概算約9億円の売上を生み出しています。2019年2月に行われたイーベイ・ジャパンの「イーベイ・ジャパンセラーサミット2019」においては、「セラー・オブ・ザ・イヤー」に輝いています。

なお同サミットでは他にも3部門の表彰が行われていますが、そのすべてで中古EC企業が受賞しています。このことからも、越境ECがリサイクル業界で存在感を高めていることがわかります。

コメ兵は東南アジアの大手モールに出店

1947年に愛知県大須で古着屋として創業し、現在は日本最大級のリサイクルショップとして全国に展開しているコメ兵も、越境ECによる売上拡大を目指して現地モールに出店しています。

同社が出店したのは、東南アジアの大手ECモールREEBONZ。コメ兵は2018年11月からテストを兼ねてREEBONZへ出品を行い、想定を上回る売上を体感。同モールへの出店を決めたのだそうです。

同社は2015年からイーベイにも出店しており、中国の法人向け事業会社KOMEHYO HONG KONG LIMITEDも展開、今後はタイにも事業進出を計画しています。こうしたコメ兵の動きを見ても、越境ECがいかに次の販路として有力なのかがうかがいしれます。

まとめ

日本国内でも出店するモールによって売れる商品、高値がつく商品は違います。これが国内と海外になれば、その違いはますます大きくなります。そのため越境ECで成功するためには、越えなければならないハードルも少なくありません。

したがって、「現時点では様子を見よう」という判断も間違いではありません。しかし同時にそのハードルを乗り越えていち早く市場を開拓すれば、先行者利益を得られる可能性も高くなります。

どちらを選ぶかは事業者次第ですが、選択肢としては把握しておいて損はないでしょう。